第五十三話 正体を晒す・前編
重戦闘区域に連れて来たものの、一旦レンリさんを呼ぶから、と言われ俺達は待機を命じられる。知らない場所に来たということが分かるのか、アルカは不思議そうな顔で周囲を見渡しているな。
「……ん?」
レンリさん……の前に、扉からひょっこりとスミレとれおが顔を覗かせる。よくあることではあるが良いのか勝手に来て。
「……!?」
なにやらショックを受けたような顔をしながら飛びついて来たな。一緒について来たれおはひより……もうテオで良いか、によじ登りつつアルカを見て首を傾げている。
「あえー?」
「アルカさんとミライさんですよ」
「あうあ!いーあい!」
「この子が遣霊……?」
「そうですそうです。れおと言います」
「おれれお!」
「スミレ、ほら」
「……」
ぐりぐりと頭を押し付けて来るスミレを数回撫でれば、動きがゆっくりになってからそろそろと顔を上げ、アルカとミライさんの方を向く。
「こいつはスミレ、そこに転がっているのはイデアだ」
「転がって……?」
「ああ、そこの黒い塊」
「え!?」
俺の声に反応したのか頭……のような部分が持ち上がったな。相変わらず顔はないんだが、なんとなく動きから頭だろうと判断する。スミレはというとアルカの存在が気になったのか、じっと見つめていた。
「顔がない……!?」
「まぁ、イデアだからな」
「不思議な生き物ですよねぇ、イデアさん。無害ではあるんですけど」
「うあーい」
「無害……ではあるか。別に噛んだりはしない」
「(こくこく)」
イデア本体はごろごろと転がってるだけだが、スミレは俺の言葉を肯定するように何度か頷く。一応謎の生き物だという自覚はあるんだろうか、足元にぶつかって来たので持ち上げれば、おおよそ生物とは思えない伸び方をして地面に落ちて行った。
「……そういえば、スミレとれおもアルカのことがみえるんだな」
「遣霊だから……ですかね?」
「その可能性が高いが……」
「私が会えなかっただけで、アルカちゃんって意外とちゃんと見えるんだね……」
「(ふるふる)」
「(ふるふるふる)」
「なんか首を横に振ってますけど」
「流石に見えるのは特殊例……なのか?」
アルカだけじゃなくスミレも首を振ってるからな。恐らく本来は早々見える存在ではないんだろう。事実としてアカデミーの人間も魔術部門の先輩方もアルカの事を認識出来てはいない。
「お待たせしました……おや、スミレさんとれおさんも来ていたんですね」
「あれん!れんい!」
「良いのかよ勝手に来て。れおお前ちゃんと抜け出すこと言ったか?」
「いっえーあい!」
「おいこら」
「おあー」
不許可で抜け出してきたのか二人共。真偽を確かめるためにスミレに視線を向ければ、わざとらしく目を逸らしたぞ。
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