第五十一話 残された者の進退
ぞろぞろと人がいなくなっていくのを見送る。流石に危害を加えるつもりはなかったとはいえ、訓練室以外で火球なんぞ生成されたら防衛システムも働くというもの。点検もあるしもう一度同じことをされた場合重戦闘区域に通信が行く可能性がある、と眼鏡の先輩が進言すれば候補者達は一も二もなく帰って行った。
「火球を出すなんて……」
「びっくりしたよねぇ。よくあることだけど」
「あるんですか?」
「うんあるよ」
「脅しの一種だよー」
「あの量は久し振りに見たけど」
「入江くん大丈夫?火傷とかしてない?」
「大丈夫です。先輩方も大丈夫でしたか?」
「やだイケメン……!」
「心配の仕方がスマート!」
「やっぱ俺達とは格が違うぜ……!」
……俺は別に普通に心配しただけなんだけどな。先輩方のイケメン基準が低すぎるんじゃないだろうか。そもそも脅しで火球なんて出さないでほしい。
「あ、皇達見ませんでしたか?」
「皇くん達?見てないよ?」
「皇くんなら奥の訓練室に移動してたー!」
「さっき飲み物貰ってた!」
「奥の……」
確か、奥の訓練室って設定が複雑だから今回は使わない、とか言ってなかったっけ?何か用事……わざわざ空いている訓練室に行く必要があった、っていうことだろうか。不思議に思っていれば、ひょっこりと皇が顔を覗かせる。
「……あれ」
「あ、皇」
「入江。……人が少なくないか?」
「今ちょうど候補者達が帰ったところで」
「えっ!?」
「え?」
……今、室内から聞き覚えのない声がしたな。皇が室内へと戻ったので俺も後を追えば、そこには動揺した姿のミライさんとペットボトルを持った子供がいた。……なんでペットボトル?
「帰っちゃったんですか……?」
「え、はい。……置いて行かれたんですか?」
「た、多分……どうしよ、今なら間に合うかな……」
「間に合うか?」
「どうだろ……さっき先輩方が塩撒いてたからもう帰ったかも」
「そ、そんなぁ……!」
「(ぶんぶん)」
流石に一人残されるのは想定外だから心細くもなるよな……と思いつつ、子供の方が気になって仕方がない。なんでペットボトルを振ってるんだろう、ひよりも同じようにペットボトルを振ってるし。
「……丁度いいとは思うんですけどね」
「まぁ、言いたいことは分からないでもないが。流石に急じゃないか?」
「大丈夫だと思うんですよ僕。だって志葉さんとの戦闘時点で大分逃げ腰でしたし」
「そうか……?」
確かに皇の戦闘を見ている時点でかなりの人数が逃げ腰ではあったけれども。なんなら火球を一瞬で消化したロイドさんの行動にも引いていた。多分あの様子ならもう一度呼んでも何かと理由を付けて来ない気はするな……。
「だからほら、もうミライさんだけ所属させましょうよ。魔術部門」
「ひぇえ……」
……それはそれとして、ひよりの勢いはちょっと良すぎる気がするな。
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