第四十七話 魔術師とかたる・伍
二人揃って俺を見上げて来るが、俺がどうこうできるものでもないのでしばし沈黙する。こうしていると二人は似ているな、姿というか、挙動が。
「……?」
困惑と、驚愕の気配。気付かれないように視線を向ければ、ミライさんが子供を見て慌てていた。……今気付いたのか、流石に不味いという認識はあるようだな。
「困ってますね」
「そうだな。戻った方が良いんじゃないのか?」
「……?」
「だめだ分かってない」
言葉が通じているかどうかを疑いそうになるくらいにはこちらの言っていることが伝わらないな。どうしようかとひよりと顔を見合わせる。
「……空いてる訓練室ってありませんかね?」
「確か一番奥は空いていたと思う」
「じゃあちょっと声掛けてきます。ここで話すと目立ちそうですし」
ひよりが声をかける時点で目立つのでは?という疑問は口に出さなかった。じっと見つめて来る子供に手を伸ばせば大人しく抱えられる体勢になる。ひよりの方もほぼ背を押す形であったが移動を始めたので、一声かけてから奥の訓練室へと移動した。
「……お前も、スミレと同じように喋らないのか?」
「?」
きょとんとした表情で俺を見上げる子供。心なしかスミレと同じくらいの大きさのような気がしてきたな。訓練室内に入れば、困ったように眉を下げているミライさんと目が合った。
「だっこしてる……!?」
「?」
「え、あのっ!…………もしかして、アルカちゃんのこと……見えてるんですか?」
「んぇ?」
「見えてる……とは?」
思ってもない言葉が来たな。アルカ、というのは恐らくこの子供だとして、つまり本来は……見えないという事か?ひよりも訳が分からない、と言わんばかりに首を傾げている。
「見え……ないんですか?」
「ええと……少なくとも私以外で見えてた人、初めて見たんですけど……」
「そうなのか」
「?」
話題の中心にも関わらず興味がなさそうだな。ふにゃふにゃと眠いのか口をもごもごさせるばかりで応える気がまるでない。
遣霊……が一般人に見えない、という訳ではないのでこの子供が遣霊、という訳ではないんだろう。特性の暴走……だとしたら何故俺達が見えるのかも分からない、試しに強く気配を探ってみたが、特段気になるようなものは……いや。
「やけに気配が希薄だな……?」
「影が薄いってことですか?」
「そうとも言うが……そもそも気配がこの世界に馴染んでいない、というか」
「……外から来た?」
「どちらかというと……まだ、生まれていない、ような」
俺の言葉を聞いた子供は、数回瞬きをしてからあくびをしただけだった。
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