第四十五話 魔術師とかたる・参
「まだ人がいるなら、連戦しても構いませんよ」
別の人が指名されないように先手で声を上げる。ロイドさんが驚いたように目を見開いたが、動き出したのは相手の方が先だった。一人、二人と名乗りを上げたので流れるように制圧する。
「この程度ですか?」
魔術師を名乗る割には魔術を使った形跡がなかったな。純粋に起動が遅い、という可能性もない訳ではないが……別に不意をついている訳でもないし、順番に戦っているのだから先んじて起動準備をしていればいいのでは?と思わない訳ではない。
次の相手が出るまでにさっと周囲を確認する。先輩方は相変わらず興味深そうにうごうごと固まっているだけで悪意や敵意を向けている気配はない。一方でやって来た人達は……大多数が引いているというか、怯えている気配があるな。少しやりすぎたか?
「……」
まだ見ているな。そりゃこれだけ目立てば興味も持たれるか。興味はあれど怯えや警戒が見られないのは……本人の技量が高い故の余裕か、それともなにも分かっていないからか。不思議なことに、ミライさんも驚きこそすれ悪感情は抱いていないのが印象的だった。
「ば、化物……!」
「おや、想定外の結末になったからといって相手を貶すことはいただけませんね」
ロイドさんが唐突に流暢な喋りを見せて思わず面食らう。さっきまでは百面相をするばかりで語りは眼鏡の先輩が行っていたはずなんだが。……眼鏡の先輩もぽかんとしているということはやはり想定外なんだな。
「先に提案したのはそちらでしょう。彼はその提案に則って実力を示しただけです。そこはお間違え無きよう」
「そうですね。言い出したのはそちらです」
ロイドさんと眼鏡の先輩、その両方から圧を掛けられて相手が口籠る。俺としては別にどう思われていようと目的が達成出来るならばそれでいい、と思っているが、流石に気になるのか。……正直恐れられてこのまま人が入らなければ目的自体は達成出来るんだが。
「っ魔術師ならば魔術も使えるんだろうな!?」
「そりゃ勿論!魔術師なんだから当たり前でしょう?」
「ならばこれを起動してみろ!!」
そう言って叩きつけられた術式を眼鏡の先輩が摘まみ上げる。成程、と一つ呟いたかと思えば近くにいたひよりへと手渡した。
「この術式はかの有名なジル教授が――――」
「はい」
相手の言葉が途中で止まる。手渡されてほんの数秒で起動された術式に、声も出ないようだった。ひよりはというと術式が気に入らなかったのか傍にいた夜星さんに声をかけているな。良いんだろうか勝手に書き換えて、今更か。
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