第四十四話 魔術師とかたる・弐
どうやら話がついたらしく、先頭が移動し始めたので後を追う。ミライさんの傍にいる子供が気にならない訳ではないが、直接話し掛けに行くと間違いなく目立つので諦めた。
「ごめーん誰か戦闘出来る……?」
「出来ます」
「僕も出来ますよー」
「あ、俺も出来ます」
こそこそと俺達に打診しに来た先輩に全員が了承の意を示す。流石にひよりが出るのは不味いだろうか、恐らくアカデミーとも関わりがない上に特段確執もない俺が出るのが良いだろうな、と判断して一歩進み出た。
「入江、ひよりと一緒に待っていてほしい」
「皇が出るの?」
「ああ。いざという時に動きやすいのは俺だろうし」
「気を付けてくださいね」
「ああ」
「ありがとー……!」
二人を置いて先頭に近付いていく。ロイドさん……ではなく眼鏡の先輩の方が気付いたな。軽く首を傾げられたので頷けば、心得たと言わんばかりに頷き返された。
「では、こちらは彼に戦ってもらいましょう」
「ほう?新人……か。随分と舐められたものだ」
「いえいえ。彼は、とても優秀な職員ですよ」
代表者に軽く会釈をしたが無視されたな。訓練室に通されたところで相手が誰か、というのも判明したが……成程、最初からこのつもりだったのか。
「……」
「おやおや、これでは弱い者いじめになってしまいますねぇ?」
明らかに魔術師ではない……いやもしかすると筋力のある魔術師なのかもしれないが、とにもかくにも体格がいい。ただのこけおどしだろうか、俺達以外が対峙するのは少々骨が折れる相手だぞ。
「魔術師……?」
「……最初からこれが目的で?」
「何を言っているのです?魔術師たるもの、肉体もまた鍛えていなければ、ねぇ?」
「……」
つまりあの筋肉は飾りではない、ということか。それなら話は早い。
「降参するなら今の内ですよ?」
「それは、こちらの台詞ですが」
「おやぁ?私に勝てるとでも?」
「そうですね」
一瞬の沈黙と、頭に血が上るような気配。全力を出す必要はないだろう、本来なら先手を取る必要すらない。だが、こういうのは最初が肝心だ。
顎を狙って膝蹴りを一発、揺らいだところに更に追撃を入れつつ、手足に魔力で作ったナイフを当てる。叫び声をあげられる前に喉元にナイフをあてがい、口を開いた。
「出来るだけ手加減はしたんですが、これも弱いものいじめになってしまいますか、ね」
「……!?!!?」
多分筋肉があるから致命傷にはならないだろう。脳を揺らしたので当分は起き上がれないと思われるが。想定とは違う結果になったのか、それとも試合が驚くほどあっけなく終わったからか、少しの間静寂が訪れる。
「…………あ、有り得ない!何者だ貴様は!」
「ただの職員ですが」
嘘は言ってない。魔術部門の職員ではないが、それを言ったら恐らく今戦った相手もそうだろうし。……これは実質代理戦争と言っても過言じゃないな。
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