第四十二話 魔術師とかたる・序
「緊張ではきそう」
「ほら深呼吸しとけ深呼吸」
「だめだよロイド吸って吐くから」
「吐く(物理)」
「ロイドーみてみておばちゃんの正装」
「え、ずるい俺も作りたかった……!」
「ロイド服のセンスはないから……」
「服って着れればそれでよくない……?」
「よくそれで参加したいとか言えたな」
「はい全員せいれーつ」
「番号!」
「ゼロ!」
「いち!」
「にー!」
「こういうのって一からじゃない?」
いつも通り自由だな先輩方。俺達三人は端の方に並んでいるんだが、中央辺りではわちゃわちゃと気の抜けるような会話が繰り広げられている。眺めている内に緊張がほぐれたんだろう、入江は若干苦笑しているな。
「相変わらずの騒々しさですね……害はないのでいいんですけど」
「夜岸さん」
「あれ、来ないって聞いてたんですけど」
不意に姿を現した夜岸さんに、三人揃って振り返る。魔術で飛んできたのか、気配が直前まで感じられなかったな。だがテレポートでも直前で気配を察知すること自体は可能なのか。驚きよりも疑問が勝ったのか、ひよりはぱちぱちと数度瞬きをして疑問を投げかける。
「時間になったら帰ります。顔見知りにあっても面倒なので」
心配だった……のか?魔術起動に問題がないことは夜岸さんも確認済みだとは思っていたんだが、何故わざわざこの短い時間で会いに来たんだろう。そう思っている間に、夜岸さんから手早く用件を告げられる。
「天宮さん、偽装、出来ますか?」
「偽装……あ、起動加速の術式……」
「……その様子だと忘れていたようですね。これを持っていなさい」
「ありがとうございます」
なるほど、ひよりの事が心配だったのか。確かに本人に自覚が薄かったから忘れていてもおかしくはなかったからな……わざわざ用意してくれていたとは。ひよりも夜岸さんから受け取った術式を丁寧にしまいこむ。
「そろそろ来ますね、では私はこれで」
「はぁい」
ひよりに術式を渡してそのまま部屋へと戻る夜岸さん。……本当にひよりのためだけに来たのか、律儀だな。入江も同じ感想を抱いたのか、こっそり律儀だね、と呟く。
「起動はしなくていいの?」
「はい。一般的には起動してるかどうかは集中しないと分からないらしいので。見せるときだけ起動しようかなって」
「成程ね。確かにあれだけ早く起動出来るなら加速術式なんて使う必要ないか……」
「別に普通に起動してるだけなんですけどねぇ」
「夜岸さんがいうには滅茶苦茶らしい」
「むー……でも知り合いみんなこうやってやってますし」
やっぱりレンリさんも同様の構築方法なのか。
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