第三十七話 戦わずとも、弱者ではない・中編
空いている訓練室を押さえ、外羽さんとシリウスさんが対峙する。入江はともかくれおも目を輝かせているのはどうしてだろう。スミレは興味が薄いのかあくびしているので、遣霊が特別興味を持っている訳ではないようだが。
「剣持ってますね」
「そうだな」
「華蓮が剣使うっていうの、初めて知ったな……」
「入江も知らなかったのか」
「うん。そもそも再会するまで戦えることも知らなかったし」
「おあー」
そうか、北に住んでいない限り一般区画で戦闘をすることはまずないと思っていいのか。そう考えるとアカデミーに通っていないのに北以外の人間が実働部門に入る、というのはかなりリスキーというか、訳ありなんだろうな。
「いやー楽しみだなぁ」
「あんまり期待しないでくださいね。ほんっとうに久し振りなんで」
「大丈夫だよ華蓮だし」
「現役が煽らないでくれます!?」
不安そうだな。長らく研究部門に幽閉されていたので鈍っている、というのは虚言ではないのだろう。それでもシリウスさんの反応を見る限り十全に戦える可能性がある……ということなんだろうか。
始まる前こそ不安そうな発言が飛び交っていたが、いざ本番になった途端気配が切り替わる。外羽さんの動きは一見すると何の気負いもなく立っているだけのように見える……が、明らかに隙が無いな。
「……!?」
「わぁ」
「うおーい」
「なんなー」
傍から見ているだけでも分かるということは、対峙しているシリウスさんにとっては相当なプレッシャーになっているだろう。食い入るように見ている入江と、感心するような声を出しているテオを横目に見ながら動きを観察する。
「ほら、お先にどうぞ」
「……相変わらず無茶を言う」
「来ないなら。俺から行くぞ」
踏み込みまでは緩やかに、一切の隙を見せないまま刃がシリウスさんを襲う。目線が一切揺らがない、僅かな予兆すら悟らせてくれない、ただ凪いだ目でシリウスさんを見つめながら、斬撃だけが周囲を飛び交っている。
「ど……うなってるの?」
「かなり……特殊な戦い方だな?」
「あれ、魔術併用してますよ」
「魔術を?」
テオに指摘され俺も視界を切り替える。……確かに、僅かだが外羽さんの周囲に魔術痕跡が見えるな。何をしているのかは分からない……いや、恐らく周囲の把握に魔術を使っているんじゃないだろうか。魔術で入江の使う世界視を再現している、と言い換えてもいいかもしれない。
「凄いですね外羽さん、入江さんの世界視を魔術で再現しながら情報精査して戦ってますよ」
「世界視を再現……え、死ぬよ!?」
「凄いですねぇ」
やっぱり規格外の挙動だったか。
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