第三十三話 予行練習・玖
魔力で出来ている以外は別にナイフと変わらないので取扱いに困ったりはしない。ひよりと入江もそれは同様なので、射撃練習は滞りなく終了する。
「魔力弾って何で真っ直ぐ飛ばないんだろうね」
「飛ぶよ真っ直ぐ」
「寧ろ直線にしか飛ばないよ」
「それは嘘だよ俺の追尾するもん」
「俺のは分裂する」
「なんでそれが出来るのに通常の魔力弾を撃てねぇんだよ」
「制御法を教えられるだけの技量を持った上司がいなかったからですね」
性質を変えれば射撃の仕様も変わる。基本的に特殊な性質を持たせない方が使いやすいのでそのまま撃ち込んではいるが、最初から性質が変わることもあるらしい。
「ムラがあるのは知ってるけど、普通ってこんな個人差が出るんだな。我流な上に特殊例しか見たことねーから知らなかったわ」
「そりゃ元一般人ですもんムラしかありませんよ」
「俺達も我流みたいなもんですし」
「この人達は大概に変ですけど」
「えぇ!?」
流れるように梯子を外された先輩方が驚いているな。……本人達はあくまでも”普通”だと思っていたのか。俺から見てもかなり変わっていると思うんだが。
「性質はおかしくても弾速、耐久はそれなりに実用レベルなのがおかしいんですよ貴方達は。正真正銘の一般人や初心者から出されるのは見るに堪えない魔力弾のような何かだけです」
「だってそんなのじゃ生き残れないでしょ」
「そうですよ怪異の群れに放り込まれたら死んじゃう」
「待ってそんなことされたのお前?」
「え?割と皆やられてない?」
「俺はやられた」
「やられたやられた」
「俺倒せないから隠密技術だけ上がったよ」
「俺倒した!」
……なんだか、とんでもないことを暴露されている気がするんだが……雪代さんの反応を見るに幻聴ではないらしい。そうか、そんな過酷なことを……。
「お前らそんなことされてたの……?こわ……」
「ロイドされてないの!?」
「俺は別に……死にかけたのは一回だけだし」
「いつ?」
「ちゃんと死にかけてる」
「え?ほら魔力を励起させる!とか言って全身に魔力流されたとき」
「死ぬってそれは」
「だから死にかけたって言ってんじゃん!」
……隣にいる眼鏡の先輩の表情がみたことのないものになっているんだが、大丈夫だろうか。雪代さんは一周回って朗らかな表情でヨシ、と呟く。
「潰すか魔術部門!」
「安心してくださいもう潰れました」
「いやこれアカデミー時代の話なんで!」
「そうですよ魔術部門は悪くない!」
「基本固まって動けたんで被害は少なかったんです!」
「当社比!」
「やっぱ滅ぼそうぜアカデミーごと。なんつーことしてたんだよ魔術部門」
「だから自業自得で滅んだんですってば」
あらぶってるな雪代さん。
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