第三十二話 予行練習・漆
起動した術式は光の尾を引いて周囲を飛び回る。ひよりがつい、と指でつつけば逃げるように光の粒はどこかへと行った。
「これは……」
「魔力量を可視化してる。まぁ都合上魔術残滓も可視化されてるっぽいが……」
「今光の粒が逃げましたけど」
「なんでだろうなー」
「残滓ですもん逃げますよ」
「残滓ってそんな動くようなものではないんですよ」
残滓は痕跡なので動いたら大問題だと思うんだが。ひよりは気にしていないのでよく見る……少なくとも異変ではないらしい。再び戻って来た光の粒はきらきらときらめきを降らせながらひよりの周囲を飛び回る。
「やっぱ好かれてんな」
「魔力量が多いんですね天宮さん。アカデミーには通っていなかったんですか?」
「え?はい」
「道理で……それだけの実力があればどこの部門だろうと目をつけられていたでしょうね」
「まぁそうだな。目をつけられなくてよかったよ本当に」
雪代さんの心底同意するような言葉にひよりもこくこくと頷きを返す。実際は目をつけられていたとしても、研究部門との兼ね合いでそう酷いことにはならないと思うが……いや、寧ろ実働部門から移動させられる可能性はゼロではないのか。そう考えると本当にギリギリだったな。
「因みに最初にひよりが起動した術式は……」
「あれも使ってもらう。使えるもんは多い方が良いからな」
「分かりました」
「これだけの魔術を見せられたら、普通なら遠慮して辞退すると思うんですがねぇ……実際は辞退どころか難易度すら分からない相手が来るので、実際に起動させるしかない」
「そうだな。これを一発で起動させられるんならもう何も言えねぇよ」
「一発で……」
ひよりを見ていると麻痺してしまうが、本来は一発で魔術式は起動できない……のか?起動速度については言っていたが、起動自体の難易度については俺も良く分からない。基本的にどんなに複雑な術式でも起動が難しい、という感覚がないので。
「あとは……魔術師も自衛が必要です!とかっていって魔力弾でも使わせるか?」
「ああ良いかもしれませんね。それなら彼等も出来るでしょう」
「ともちゃん無茶ぶりー!」
「魔力弾撃てても精度は別なんだぜー?」
「魔術でキャッチボールしてたんですから可能でしょう」
「うわ何故それを」
「ばれてーら」
「確かにキャッチボールはしてたけどその場にともちゃんいなくない!?」
「バレーボール大会も開催したけど!」
「来週はボウリング大会するよ!」
「大丈夫そうだな」
「ええ。愉快な生き物ですけど実力は本物ですよ」
まぁ……確かに愉快な人達ではあるな。愉快すぎる気がしないでもないが。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




