第三十一話 予行練習・陸
「私が知らない間にレイスの方でそんな騒動が……」
「はい」
「はい」
俺とひよりからある程度の話を聞いた夜岸さんが息を吐く。……別に重戦闘区域側がわざとレイスを潰した、という話はしていないが、あまりにも流れが完璧すぎて非常にわざとらしいな。実際わざとなので何もおかしなことではないが。
「それにしても氷野さんが重戦闘区域に配置換えになる理由は意味が分かりませんけどね。相変わらず訳が分からない」
「……レンリさんと親しいんですか?」
「いえ、知り合いの後輩、というだけです。多分あちらは私の事知らないと思いますよ」
レンリさんの先輩……の知り合いなのか。……つまりどういうことだ?俺は首を傾げ、ひよりもまた緩く首を傾ける。魔術部門だから知らない……のか?つまりサボさんは知っている?
「すみません、意味がよく……?」
「氷室の後輩なんですよ、氷野さんは」
「氷室さんの……」
知り合いなのかレンリさん。そこが繋がるとは思っていなかったな……つまりレンリさんに話を聞けばもう少し詳しい情報がもらえる、ということか?
「つまり……ええと、透さんの知り合い?ですか?」
「まさか!……そりゃ一方的に認知はしていますが、東雲さんは私を認知はしてないでしょう。というか、されてると困る」
「困る?」
「はい。目をつけられると面倒なので」
「……?」
なんだか、今までの話からは想像もつかないような発言が出てきたな。基本的に優等生で大人しい人だと思っていたんだが……実はそうでもないのか?
「皇ーそっちどうだ?」
「あ、はい。一応起動は出来ますが」
「お、じゃあちょっとこっち起動してみてくんね?」
「別の術式……ですか?」
「そう。思ったよりも難易度上げて良さそうだったからな」
……もしかして難易度上がったのか?雪代さんは俺に術式を渡しながらひよりの手元も覗き込む。
「ひより、お前はこっちに変えれるか?」
「これですか?」
「そう。一旦起動してみてくれ」
「はい」
雪代さんに新しい術式を渡されたひよりだが、やはり特段苦労する様子もなく起動したな。術式を確認する様子すらなかったんだが……一瞥しただけで魔術式を把握することが出来る、ということか?
「まぁ……分かっちゃいたが普通に起動出来てるな。よし、じゃあひよりはそれ使うってことで」
「はぁい」
「大丈夫ですかこれ。こんな難易度のものうちの職員達が出来るとは思いませんけど」
「大丈夫。時間はかかるけど起動は出来る。つかさせる」
「なら良いんですけど……」
「つかこのレベルの魔術を全員が出来るなら皇達が関わる必要もねぇんだよな」
「それはそうですね」
……そんなに難易度の高い術式なのか、これ。
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