第二十八話 予行練習・参
「てことではい」
「はい」
「はい」
「これを……起動するんですか?」
「そう。ただの異物判別機ではあるんだが、条件を複雑にしてるから起動が割と面倒になってる。というか知ってても時間がかかるレベル」
「え?」
きょとん、とした表情のひよりの手元から光が漏れる。迅速に拡がっていく光は瞬く間に術式として組み上げられて、そのまま魔力が流される気配がした。
「嘘だろ……!?」
「何事!?」
「これは引っくり返っても許される」
「引っくり返り過ぎて逆に冷静になっちゃった……」
「雪代さんが驚くレベルだと逆に凄すぎて実感がわかない」
「取り敢えずすごいってことは分かる」
「それ」
術式に詳しくない俺でも、今のが本来は有り得ないこと、ということは分かる。ひよりはというと驚かれたことに驚いたのか俺の背中に張り付いてしまった。
「雪代さん」
「ああ悪い、驚かせたな。いや驚いたのは俺の方だったんだが……」
「……駄目でした?」
「駄目ではない。本当に驚いただけ」
「さっき、雪代さんは起動するのに時間がかかるって言ってませんでした……?」
いまいち理解出来なかったらしい入江が雪代さんへ問い掛ける。そのはずだったんだが、と前置きをして雪代さんは改めてひよりの方に視線を向けた。
「……どうやった?」
「ええと……普通に魔力を流しただけなんですけど……」
「抵抗というか、一気に流せるモンじゃないだろこれ」
「流せないんですか?」
「おっけーそこからか」
前提の認識が違いそうだな。試しに俺も魔術式に魔力を流してみる。……入口が狭いというか、魔力の通路が狭い感じはあるな。確かにこれは起動に相応の時間がかかるし――――ひよりが即時起動出来た理由も分かる。
「ひより」
「はい?」
「どうやって魔力を、全ての箇所に同じだけ注いでいたんだ?」
「どうって……いつも通り、下から?」
「下?」
「魔力を流すのに上とか下があるんだ……」
「俺達も初めて聞いた」
「てか魔力の流し方って弄れるんだ」
「そこはほら、基礎技能かもしれないから」
「俺よく分かんないけど多分先輩達も魔力の流し方とか知らなかったと思うよ」
「そりゃそうだろ上司達は権力の使い方しか知らなかったんだから」
「安心しろ基礎技能ではない」
魔力の流し方、か。恐らく弄ろうと思えば弄れるとは思うが、自発的に弄ろうとは思わなかったな。試しに流す方向性を変えるように意識を向けてみれば、変なところに魔力が流れて拒絶するような火花が散った。
「皇、大丈夫?」
「ああ、問題ない」
「魔力を流すときは先に術式を把握した方が良いですよ」
「術式を……」
中々難しいな。ただ、確かにこの難易度の術式を即時展開させることが出来たら強いかもしれない。
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