第二十六話 予行練習・壱
「天宮ひよりです」
「ひより……」
「はい。認識阻害もつけたから早々バレないってレンリさんが言ってましたー」
レンリさんが言っていたのなら間違いないな。スミレも感心するように眺めているだけなので問題はないんだろう。
普段はひとまとめにされている髪がおしゃれに結われ、つけている眼鏡も別のものに変わっている。すごいな、髪色や瞳の色などの変化はないのにちゃんと別人に見える。
「天宮さんって呼べばいい?」
「ひよりでいいですよ」
「いおい!」
ひより、か。入江も何度か確かめるように呟いてから頷きを返す。流石にぶっつけ本番は不味いだろう、という判断で一度使用する魔術を確認するために魔術部門へ向かうんだが……テオが関わっているというのは出来るだけ知られない方がいいからな。
「お、全員いるな?」
「雪代さん」
「おー……ちゃんと偽装出来てるな。なんて呼べばいい?」
「天宮ひよりって名乗るので、ひよりで」
合流した雪代さんは、特にひよりに対して驚きの表情は見せなかった。慣れている……というよりは、自分も同じくらいのクオリティで偽装できるからこそ、だろうか。
「おっけ。じゃあ三人とも行くか」
「はい」
「いうお!」
「なんな?」
「あ、れお達は留守番な」
「おあ!?」
「んなーん」
「うん。ちょっと待っててねレン」
「だん!」
雪代さんの言葉に衝撃を受けるれお。レンは予測済みだったのか素直に入江から降りてれおの肩に乗る。俺もスミレを下ろそうとしたんだが……相変わらず抵抗してくるな、不思議そうな表情を浮かべながらしっかりと服を握り締めてくる。
「スミレ、待っててほしいんだが」
「(ふるふる)」
「お、嫌がってる……まぁ普段ならまだしも他所から人が来るからなぁ……出来れば遠慮してくんね?」
「(ふるふるふるふる)」
首を振りすぎじゃないだろうか。意地でもついてくるつもりだろうか……流石にそれは困るし、俺もスミレを魔術部門へ連れていくつもりはない。
「スミレ、今回は駄目だ」
「…………」
「遣霊を連れた職員、となると一発で重戦闘区域の職員だとばれてしまう。それは避けたい」
「………………」
スミレも一理ある、と判断したのか不満そうながらも手を放してくれたな。どんなにうまく擬態しても、遣霊を連れている時点で重戦闘区域の職員だとばれてしまう。最終的にばれるのはともかく最初から知らしめたいわけではないからな……。
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