第二十話 フェア・トレード・後編
「私には妹がいるんですが、丁度アカデミーに通っているんですよね。残念ながら本人は実働部門志望ですけど、友人に訳ありの方がいまして」
「訳ありの」
「はい。あ、詳細はこちらです」
夜岸さんが差し出してきたタブレットを夜星さんと共に覗き込む。魔術適性やら魔力伝導率やらが書いてあるが……生憎俺には何が良いのか分からない。ミライさん、年齢は俺と同じなのか。ふにゃふにゃとした笑みを浮かべる姿に邪気はない。
「え、俺達よりすんごい」
「ええ、生半可な才能ではありませんよ。適性は高いんです適性は。ただ、如何せん本人の闘争本能が弱すぎる」
「そんなに?」
「龍種であるにも関わらず自己紹介を上手く出来ずに人間だと誤認されるくらいには」
「え、龍種!?」
「龍種……」
それは……つまり、あの龍の同類、ということなんだろうか。映っている姿は人間に見えるが。擬態が出来るのか?
「龍種だとバレたら面倒なことになることが確実なのでそこは良いんですけど、とにかく押しが弱いんですよね。このままだとアカデミー卒業できません」
「そ、そんなに……?」
「はい。既に実績を横取りされたことに気付かず留年してるんですよ」
「それは話が違うくない……?」
そこまでいくと闘争本能の話じゃない気がするな。夜星さんも若干引き気味に何故ヒュリスティックに入ろうとしているのかを問う。
「友人だから、ですかねぇ……?私も詳しくは知りません、あかねに頼まれて手続きを行っただけなので」
「……もしかしてともちゃんのおうちって、すごい?」
「家は普通ですよ。私は普通じゃありませんでしたが」
「……」
少なくとも身元が曖昧な相手をアカデミーに入れられるだけの実績がある、ということか。多分かなり優秀なんだろうな……上司に逆らっても黙認されていたレベルなので。
「では、この人……ミライさんを魔術部門にスカウトする、と?」
「そうですね。一応カモフラージュのためにアカデミーからも何名か呼びましょうか」
「頑張ってねともちゃん、俺達木っ端魔術部門職員の意見は無視されちゃうから」
「今の責任者はロイドでしょうもうちょっと粘りなさい」
「無理だよロイドリーダー向いてないし」
「じゃあ何故責任者にした」
「じゃんけんで負けたから……」
……こう聞くと魔術部門の先輩方も権力に微塵も興味がないというか、闘争本能はないように思えるな。いや俺も権力なんて興味はないんだが。……そう考えると別に変な事ではないのか。
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