第十八話 気付きと出会いと・後編
雪代さんは先輩方にまだ教えることがあって忙しいらしいので、俺と夜星さんだけで夜岸さんに会いに行く。話だけを聞くとかなり気難しい方のような気がするが、大丈夫なんだろうか。
「ともちゃーん差し入れー!」
「そこにおいておいてください」
「あとともちゃんにお客さまー!」
「私に?」
「そう!」
少し離れたところにある扉を夜星さんがノックすれば、聞き覚えのない声がして中で人が動く気配がある。……声に覚えはないけど、気配は中戦闘区域で感じた気がするな。多分この人ではないだろうけれど……多分、知り合いか同期と出会ったことがあるんだろう。
「誰ですかこんなときに……」
「こんにちは」
扉から出て来た相手に向かって会釈する。間違いなく見覚えはないので本当に同期か知り合いと出会っただけだろう。そう思っていれば、相手は動きを止め、じっと俺を見つめて来る。
「……どうかしましたか」
「――――貴方、どこで氷室と出会ったんですか」
「氷室?」
聞き覚えのない名前だな。夜岸さんの中でその氷室さんなる人物の手掛かりが俺にある、という判断なんだろうが……俺には自覚が一切ない。
「氷室さんって、ともちゃんが探してる人?」
「はい。いくら氷室でも重戦闘区域の職員を模すことは不可能、となれば重戦闘区域外で会った職員が該当するはず……!」
「……」
流石に情報が少なすぎるな。重戦闘区域以外で出会った職員、と言われても範囲が広すぎる。せめて支部かどうかが分かれば絞れる……訳でもないな、どう判別したのかにもよるが、もう少し情報がないと何とも言えない。
「その人は……同期ですか?」
「ええ。にわかには信じ難い話なんですが、……番、らしいんです」
「番……」
発言から察するに氷室さんの方が妖怪、なのか?恐らく夜岸さんに自覚はない、それでも探してしまうのは……自覚はなくとも引力がある、ということなんだろうか。
「番……ということは、恐らくですけど、中戦闘区域で擦れ違った人だと思います」
「中戦闘区域で……」
「はい。近しい気配があったので」
番だから気配が近しいものである、というのは同期や知り合いであることよりも信憑性が高い。そして最初に言っていた内容から姿を変えることが出来る、と仮定した場合……俺が違和感を覚えた理由もそこになる。
「少し話を聞かせて下さい。探してるんです」
「分かりました。その代わり……という訳ではありませんが、一つ、頼みを聞いてください」
「私にできることなら」
想像よりもスムーズに話が出来そうだな。良かった。
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