第六話 想定外の具申
東雲の容体が安定した、と聞いてアランは何故か私を連れて医務室へと向かう。何かを危惧しているのか、それとも単なる緊張なのか。アランに理由を聞いても曖昧に濁すばかりで答えてはくれなかった。
「失礼します」
「あ、どうぞ」
宇月もアランだけじゃなく私がいるのを見て目を丸くしているな。だが指摘するまでもないと判断したのかすぐに奥へと促す。別に指摘しても良かったと思うが……まぁいいか。
「東雲さん、失礼します」
「アランさんと……リアムさん?」
「ああ。私はただの付き添いだ」
「成程」
東雲は一応指摘はしたが言及はしなかったな。すぐに視線をアランへと戻し当たり障りのない会話を行っている。互いにタイミングを探っていたんだろう、不意に言葉が途切れたタイミングで、東雲が本題を切り出した。
「あの……アランさん、今後についてなんですが」
「はい」
「私は……レイスに移籍したいです」
「レイスに……ですか?」
「はい」
思ってもない発言だったな。アランも意外だったらしく目を丸くしている。東雲の発言をかみ砕くようにアランは少しだけ沈黙を返し、やがてゆっくりと理由を問いただす。
「理由としては、透の気持ちを知るため、です」
「東雲透さんの……ですか」
「はい。本当はヘブンに移籍するべきなんですけど、それは不可能なので。透が何を思って支部に行ったのか、どんな生活だったのか、……どうして、透は実働部門を私に勧めたのか」
「…………」
「無理を通そうとしているのは百も承知です。ですが、どうか……!」
「そうですね。今の東雲さんなら……恐らく問題はないでしょう。ヘブンの方も落ち着いてはいるので……ええ、どちらにせよレイスに移籍する人が必要なのは事実です」
色々と言葉を飲み込んだな。元々そこまで意思表示をするタイプではないが、あまり善くはない反応を見せたのはおぼろげながら分かる。東雲も気付いて指摘しようとしたが、すぐにアランは切り替えて穏やかな笑みを口角に乗せる。
「東雲さんが移籍するとなると、メンバーについても考え直さなければいけませんかね。元々重戦闘区域で働いていたのが三人なので……まぁ正直なところを言ってしまうと誰が移籍しても上層部側からの意見は出ないと思われますが」
「アランさんアランさん、レンリさんって移籍予定でしたっけ」
「本人は、その予定でしたね」
「じゃあそれ俺と交換してください。説得は俺がします」
「宇月が?」
「うん」
宇月も移籍するのか……そうか……俺が何かを言えるようなことではないが、少しだけ寂しいような気はするな。
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