第八十五話 相手にとって
アルマさんが接触した部分からボロボロと腕が剥がれ落ちていく。……明らかに普通の消え方ではないな、どちらかといえばアランさんの特性とよく似た気配だった。
「遠慮するなよ。まだたった一発だろ?」
その一発で充分すぎる被害が出ているんだが。アルマさんは煽るように笑みを浮かべ、どこまでも不敵に笑う。
「今回は腕一本で済ませてやる。だが、次――――シリウスを狙ったら、その安全圏から引きずり出してでもお前を殺す。剣としての権能を使って、お前達をこの世界から切り捨てる」
剣……剣?アルマさんって剣なのか。意外とは言わないが、剣は数が少ないので混ざり込むのは不可能だと思っていた。少なくともアランさんは入江が”そう”であることを知っていたので。……いや、アランさんなら知っていても黙っている可能性があったな。
あの腕が果たしてどこまでこちらを認識しているのかは定かじゃないが、アルマさんから逃げるように気配が帰っていく。意外と素直だな、と思った瞬間俺目掛けて攻撃が降って来たので、身体を捻ることで勢いをつけ、思い切り打ち返した。
「おい無事か?」
「はい。攻撃が降って来ただけなので」
この程度なら警戒すら必要ない。恐らく負け惜しみの一撃なんだろうが、随分と杜撰だったな。もう少し角度がつけば速度が乗って威力が出たんだがな、あの角度では当たりどころが悪ければ怪我をする、程度の威力しかない。
「……一応、これで収束になりますかね」
「舐め腐ってはいるだろうが、少しの間の抑止にはなるだろうな。少なくともシリウスを狙おうと思ったらまず俺達を分断させにかかるはずだ」
「成程。分かりやすいですね」
「前向きな意見で何より」
一番直近で不安があるとしたら、ユウさん達の件か。俺もアルマさんもアランさんも、なんならテオまで戦闘になると思われるので……シリウスさんも巻き込むくらいしか対処する方法がない。
「……そういえば、アルマさんって剣だったんですね」
「あー……まぁな。俺としてはあんまり本意じゃねえが、使えるんなら使うまでだ。数少ない有効打だからな」
「そうですね」
剣という肩書があるだけで守れるものがあるのなら積極的に名乗るべきだ。勿論実力が伴っていることが前提ではあるが、アルマさんはその辺り心配がないので。……本当に、名乗るだけで守れる可能性が上がるのなら、是が非でも名乗るべきだと思う。
「……皇?」
「……はい」
「…………お前のリベンジはまだ先だろ。必ずタイミングは来るから、心配するな」
「……?」
それじゃあまるで、俺にも天使の番がいる、みたいな。
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