第八十二話 三者三様の・前編
三人掛かりだと過剰戦力になるな、と判断していたが問題はなかったらしい。強さこそないが絶え間なく現れる怪異を倒し続けること数分、空気感が変わったのを察知して全員が傍へ寄る。
「分担をしましょうか?」
「相手の数によるな」
「多くても二体だと思いますが」
「ならそうだな、護衛として残ってくれるか」
「分かりました。志葉さん、武器はどうしますか?」
「とどめ用として、一振りお願いします」
「分かりました」
アランさんはシリウスさんの護衛として地上に残り、俺とアルマさんは討伐の為に上空へと駆け上がる。本当はアランさんが討伐に回る方がいい気もするが、本調子でない相手を対峙させるのはリスクの方が大きいか。
「戦闘経験はあるか?」
「ないです。対峙したのも前回が初めてです」
「意外だな。……まぁ良い、今のアイツらに肉体はないが情報はある。物理的な切断は不可能でも切断という概念を押し付ければ、今回の目的としては概ね成功だ」
「概念を押し付ける……」
あまりやったことのない試みだな。概念の破壊、なら経験があるんだが。斬ったという事実を与える……というのは具体的にはどうやって行うんだろう、魔術を使えば出来そう、という感想はあるが今この場で実行するとなると少し工夫する必要がありそうだ。
「すみませんアルマさん、概念の押し付けってどうやって行うんですか」
「いくつか手段はあるが、一番手っ取り早いのは重幽撃使って情報を切断する」
「重幽撃で?……ああ、阻害、という訳ですか」
「まぁそうなるな」
本来重撃は回復阻害として使用するが、今回は認識阻害……正確には情報の更新阻害として使用する。試み自体は初めてのものだが、やることとしては普段となんら変わりないのが幸いだな。重幽撃で切断して、分離した方をアランさんから受け取った剣を使い塵にする。何の問題もないな。
「出来そうか?」
「はい」
「そうか。それならいい」
威圧は別に気にならない。前回は我を忘れかかってしまったが、今回は冷静に立ち回れるはずだ。目的を忘れるな、今回はあくまでもシリウスさんを狙う相手を撃退する、それだけだ。
アルマさんは平然とした表情で空を見上げている。何を考えているのかは分からない、けれど確実にここで決着をつける、という覚悟だけは伝わって来た。
「アルマさん」
「……ん」
「アルマさんは、シリウスさんが望むなら一緒に死んだんですか?」
「…………そうだな。あいつが無理だと判断するなら、一度でも俺だけを見てくれるなら、心中だろうと逃走だろうとなんだってやったよ」
優しい表情だな。多分ちゃんとシリウスさんの優しさは伝わっていて、……伝わった上でやるせなかったんだろうな。アルマさんにとっての幸せは、シリウスさんと共にあることだったんだろうから。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




