第八十話 優しさは仇であり
アルマさんの気配を捉える前に、有象無象の気配を捉えて意識が逸れる。思っているよりも怪異が多いな、職員や一般人じゃないだけましだが、怪異も利用出来るのが意外だった。
「……触発された?」
「いえ、元々ヘブンの怪異は人間をベースにした存在が多いので。あちらにとっては肉体の有無など些事でしょう」
人間を利用するから、元人間の怪異も利用材料になる。ということか。かなりの暴論ではあるが、あながち間違いとも言いがたい。特にヘブンはその辺りの境界がかなり曖昧だったので。
襲い掛かってきた怪異は残らず切り捨てていく。わざわざ残しておく必要はないだろう、ただ物量でどうこうしようとしているならとんだお笑い草だ、この程度では一人であっても倒せはしない。
「やけに弱いんだけど、干渉出来なくなった程度でここまで弱体化するんだ」
「いえ、流石にこれは異常ですね。シリウスさん、貴方何かやりましたか?」
「え?そんな変なことは…………多分してないと思うんだけど」
どれだろうな、とぼやいている辺り何らかの思い当たる節はあるんだな。……そんな複数思い当たる節があるのか、やけに戦闘慣れしているのもそうだが、恐らくシリウスさんは世間一般で認識されるような天使像とは違う。
「っシリウス!!!!!!」
「あ」
聞こえて来た大声にシリウスさんが動きを止める。俺とアランさんは邪魔にならないように周囲の掃討は継続しつつ、少しだけ距離を取った。……流石に巻き込まれたくはなかったので。
「アル、ぐへぇ」
「グーだったな……」
「ちゃんと拳でしたね」
感動の再会ではあったが、穏やかな再会ではなかったな。容赦なく二発目を入れそうだったので流石に止める。殴りかかってはいるが本気で怒っている訳ではなさそうなので……どちらかというとけじめ、だろうか。
「……シリウス」
「はぁい。え、何で殴られたの俺」
「お前が、漸く会えたってのに勝手にいなくなるからだろうが」
「えぇ……だってあの状況でアルマ連れて逃げたら、アルマが狙われることは確実だったし……」
「別に良いだろ。今更だ」
「でも、四六時中警戒するのはいくらアルマでも疲れるよ」
「一週間もやってりゃ慣れる。鬼の適応力舐めんな」
「アルマが死んじゃったら悲しいし」
「死ぬことを恐れて離れる羽目になったら元も子もねぇだろ」
もごもごと言い訳のような発言を繰り返すシリウスさん。そんなシリウスさんをじっと見ながら、アルマさんは畳みかけるように言葉を投げかける。
「まぁ良い。結局のところ俺が弱かったのが全ての原因だ」
「いやそれは違っ……」
「違わねぇ。俺に実力があればお前を自力で連れ出せたし、お前があんなくだらない儀式に付き合う必要もなかった。それは変わらねぇ」
「そんな、それじゃあまるでアルマが弱かった、みたいな」
「事実だろ。口では否定しようと態度が物語ってる」
「……」
容赦ないなアルマさん。シリウスさんに弁明をさせる気がまるでない。……大丈夫かな、ちゃんと和解してくれればいいんだが。
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