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秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第十七章 あの日を越えて
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第七十九話 誰かのためではなく、貴方の為に

「……志葉さん」

「はい」

「ありがとうございます。ご迷惑をおかけしました」

「いえ。力になれたのなら何よりです。……次は、ちゃんと話しましょう」

「…………次、ですか」

「はい」

 俺の言葉にアランさんは沈黙を返す。まだ終わっていないということを理解した上での沈黙……のようだな、恐らくはアランさん自身が出ることは不可能、だと判断しているが故の。本人に抵抗する気がまるでない、正確には是が非でも自分の感情に決着をつけようという気がない。

「何度やっても――――」

『おいアラン職員!!!!応答しろ!!!!!!』

言葉の途中でレンリさんの大声が聞こえ、揃って口を噤む。かなり焦った様子だな、まさかとは思うが、重戦闘区域の方でも何か異変が発生したんだろうか。ちらりと視線を交わしてからアランさんは応答する。

「レンリさん、どうかしましたか?」

『どうかしましたか?じゃねーよ!何をどうしたら上位存在引き寄せるだなんて事態になってんだ!!』

「ああ、そちらの件に関してましてはヘブンの地下で予想外の遭遇がありまして。今から対処します」

『予想外の遭遇って……大丈夫なんだろうな?』

「問題ありませんよ。ただ、万が一が考えられますので、ヘブン周辺に近寄らないように説明をお願い出来ますか」

『分かった。対応する人員は?』

「私と志葉さん、それに……アルマさんが来ると思います」

『アラン』

「はい」

話の途中だったが構わず通信に割り込んできたな。アランさんも特段動じる様子もなく反応する。レンリさんもまた、空気を読んだのか口を閉ざした。

『是が非でも捕まえろ。逃がすな。足くらいなら折ってもいい』

「……なんか怖いこと言ってる気がする」

「足の骨折ってでも逃がすな、と言われてますよ」

「え、別に逃げないよ俺」

シリウスさんは心底不思議、という表情を浮かべているが一度手放すことになっているからこその警戒のような気がするな。アランさんも足を折る気はない、と言いつつ了承の言葉を返す。

『ところでアラン職員、宇月達は?』

「先に戻ってもらっています」

『分かった。じゃあそっちが落ち着くまでは待機、で良いな?』

「ええ。お願いしますね」

判断が迅速で助かるな。アルマさんはシリウスさんの足止めを依頼して以降は一切音沙汰がないので、現在猛スピードでこちらに来ているんだろう。もっと早く来るかと思っていたんだが……かなり遠くにいた可能性があるな。

「別に俺、逃げないんだけどなぁ……?」

「逃げなくとも、自己犠牲を実行する可能性はあるからですかね」

「いやいやいや、何もないのにそんな自己犠牲なんてしないって」

「少なくともアルマさんの認識ではする、と思われているようですね」

「なんで?」

なんでも何も、ヘブンの地下にいた現実が全てのような気がするんだが。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

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