第七十五話 対価を捧げ、道を拓く・参
少し離れたところにあった魔術式は、控えめに言っても大きかった。俺が単に見慣れていないからかと思っていたけれど、全員が同じ反応だったから多分勘違いじゃないと思う。
「今から解析しますね」
「分かりました。手伝います」
宇月さんが名乗りを上げて、東雲さんと一緒に魔術式の解析を始める。俺は別に魔術式について詳しくないので見ているだけだ。他の人達も現状として出来ることはない、と判断したのか思い思いに視線を向ける。
「ところで……シリウス、だっけ。天使って言ってたけど、どうやってここに?」
「どう……と言われても。そもそも俺の方が先にこの地にいたはずなんだよね」
「え、どういうこと……?」
「この辺りが村だった時代に、俺落ちて来てるからさ」
「待って本当にいつの時代の話?」
この辺り……つまりヘブンがあった場所、となると北ってこと?北に村があったとは聞かないけど、シリウスさんの発言的には多分ヒュリスティックが設立するよりも前の話みたいだから……分からなくても仕方がないかもしれない。
「いやまぁそもそも天使が普通に引力なしで生きてること自体おかしいっちゃおかしいんだけど……」
「引力自体はあります。今は影響がないだけで」
「うん。この空間が正常になったらすぐ影響は出ると思うよ」
「……連戦ってこと?」
「そうなると思います」
「流石に不味いでしょそれ。どうするの?」
「外に出た時点で……恐らくアルマさんが来ると思ってますが」
そういえばシリウスさんの番はアルマさん、と言っていたな。そんな都合よく合流できるだろうか……と思ったけれど、そもそも『アルマさんが重戦闘区域に現れたこと』自体がかなり都合のいいことなので今更か。
「アランは?意識がないってことは把握してないの?」
「一応、取り乱さない程度の把握はしている。ヘブンが正常に戻ってすぐに襲撃があっても対処が出来るくらいには」
「ちゃんと把握はしてるんだ」
「この騒動に関われないことを、かなり気にしているようだからな」
……なんだか、ちょっとだけ他人事だな。今のアランさんはアランさんであってアランさんじゃない……ほぼ別人格だとは聞いていたけど。皇は特に気にする様子もなくアランさんをみていたが、青藍さんは少しだけ驚いたように目を瞬かせていた。
「とはいえ……アルマがいても厳しいとは思うんだけどね。人手が足りないでしょ」
「いや……位相も違うし扉自体は閉ざされてるから……本体は出てこないとなると、まぁどうにかなるんじゃない?規模にもよるけど」
「あ、本体は出て来ないんだ。じゃあ大丈夫かな」
……本体って何だろう。
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