第七十四話 対価を捧げ、道を拓く・弐
「……東雲透」
『はい』
合流したタイミングでアレンさんがぽつりと呟く。東雲さんも特に動揺することなく肯定したな、はじめまして、と言ったので恐らく今の状況を正しく把握しているんだろう。アレンさんもそれ以上の言葉はないまま小さく会釈した。
全員目立った怪我はない。一応シリウスさんのことだけは周知させてから、青藍さんが口を開いた。
「取り敢えず……どうするのこれから。というかどうなってるのこれ」
「俺の認識では魔術式がどこかにあると思っていますが」
『そうですね。進行役は倒されましたが……術式自体は残っていると思います』
「術式が……この空間に?」
『そうなりますね』
流石に術式は気配察知で分からない。目視出来る範囲にないことだけは分かるが……この空間ってそんなに広いんだろうか、正直曖昧過ぎて良く分からない。
「何て?」
「「え」」
「恐らく魔術式がこの空間にあるだろう、って言ってたんですけど……もしかして青藍さん、聞き取れてない……?」
「うん。逆に聞きたいんだけど、全員聞き取れてるの?」
「まぁ」
「聞き取れてますね」
「俺は聞き取れて……は、あんまりないです。辛うじて単語が聞き取れるかな、程度で」
「僕は……聞き取れます」
「今ははっきりと聞き取れてます」
青藍さんと月野さんは曖昧だが、他の面々は聞き取れる、と。何が違うんだろう、青藍さんだけならば妖怪だから、という理由を見出せたが、月野さんもとなると恐らく別の理由がある。俺も正直なところはっきりと聞こえている訳ではないので……本来ならば俺も聞こえない可能性があるな。たまたまこの空間内では波長が合っただけの可能性も充分にある。
「アランは……大丈夫なの?」
「……まぁ、違和感はあるだろうが、こちらとしては問題はない。戦闘に期待はしないでほしいが、それ以外なら普段と遜色ない動きが出来ると思う」
「そう。……なら、良いけど」
万が一を考慮するなら戦闘なんて出来ないだろう。ある程度の状況を把握した青藍さんは、周囲を確かめるように見回す。
「魔術式、だもんね。怪異とかじゃなく」
「その筈ですね」
「んー……まぁ多分あっち。破壊だけならここからでも出来るけど」
『一応確認しましょう。万が一があるので』
「確認しましょう青藍さん。罠があるかも」
「分かった。じゃあ着いてきて」
青藍さんを戦闘にして空間を進む。アレンさんは少しだけ東雲さんを見つめていたが、結局何も言わずに視線を逸らしてしまった。
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