第七十三話 対価を捧げ、道を拓く・壱
このまま終わればそれに越したことはないが、残念ながらそう簡単な話にはならない。この空間が崩壊しないのはまだ儀式が終わっていないからだし、儀式の実行者を倒しても尚終わらないのは、どこかに儀式を継続させるための魔術式か何かがあるからだ。
「……先に青藍さん達を助けるか」
「皇」
「アレンさん」
思考を回し終えるよりも先にアレンさんが近付いて来て、重くなった体に触れる。ちらりと夏音達の方を確認すれば入江が東雲を預けていたので問題はないだろう。一気に重さが消えたので確かめるように腕を動かす。
「ありがとうございます」
「礼は良い。それより……」
「一先ず青藍さん達を自由にしようと思います」
「……そうか。手伝う」
アレンさんが月野さんと宇月の方に向かったので、俺は青藍さんのところへと向かう。存在が曖昧だったので少々苦労はしたが、特に抵抗されることなく縄は千切れ霧散した。何やら茫然としていた青藍さんは、自由になったと理解した途端俺の肩を掴む。
「どういうこと、どうなってんの」
「どう……とは?」
「アランの様子がおかしいし、おかしい割に落ち着いてるし、というか何かお前は全部知ってそうな動きしてるし、そもそも夏音と一緒にいるアイツ誰」
「アランさんは今利用されないためにアレンさんに代わってもらっています。俺は別に全部知ってる訳じゃないです。夏音と一緒にいるのは、シリウスさんという天使だそうです、アルマさんの番だって言ってました」
「………………は?」
まぁこの反応が妥当か。かなり経緯も省いているし、俺だってちゃんと正しく理解しているとは言い難い状況なので説明が曖昧な部分もある。一旦は全員の救出の方が先、と判断して東雲透さんであろう人の元へと近付いた。
『貴方は――――』
「ん」
会話出来るのか。捕まってはいたが意思疎通が出来るとは思ってもみなかった。じっと琥珀色の瞳が俺を見つめている。……似てはいるが、見間違うほどではないな。少なくとも魂としての在り方が違う。魂が根本的に別、とでもいうんだろうか。
「はじめまして東雲透さん。皇志葉です」
『はじめまして皇さん。東雲透と言います』
会話しながら縄を千切って捨てる。どこか浮世離れした音ではあるが、聞き取れない訳じゃないな。気配としてはかなり曖昧……少なくとも人間というには薄すぎるので、青藍さんが言っていた人間でも怪異でもない存在、ということだろうか。
「状況の把握がしたいので、協力願えますか」
『はい。私が力になれるのなら』
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