第七十一話 見せつけろ、その輝きを・後編
光が糸を引いて軌道を残していく。際限なく速くなっていく動きと、複雑化していく攻撃。災害にも等しい環境の中を、入江さんは笑みを浮かべながら動き回っている。
「すごい……!」
「本当にすごいね。あれで当たらないんだ」
シリウスさんも驚くってことは相当凄いだな入江さん。まぁ正直あれだけの速さが一般的に出せる筈がないので当然ではあるんだけれども。あんなに速いと制御しきれなくなりそうなのにな、不安定になる気配が一切ない。
皇さんはただじっと機会を伺っている。澄み切った瞳が何を待っているのかは分からないけれど、苛烈な攻撃の中にいても一切揺らがない視線から、恐らく何かを見据えていることだけは分かった。
「この程度か東雲!」
「……」
「大分煽るねあの子。確かに煽っても対応出来るだけの速さはあるみたいだけど」
「そうですね……」
「意識を向けさせ続ける必要があるからな。あの怪異が東雲の思考を参照している以上、下手な手は打てない」
「そんなに強いんだ、あの憑依されてる子」
「……まぁ、本職ではないのにあそこまで魔術を使えるくらいには」
「それってすごい?」
「すごいです。多分魔術部門の職員でもあそこまで魔術は使いこなせないし、ましてや実戦で利用出来るレベル、となるとかなり上澄みだと思います」
「へぇ」
東雲さんは本当に強いし、怪異が憑依しているとしても普通の職員なら手も足も出ないくらいにはとっても頭が回る。ただ幸いというかなんというか、今相対しているのが二人、しかも入江さんと皇さんだったせいで互角以上の戦いをされて、あまつさえ押し切られてしまいそうだ。そりゃ僕達からしてみれば皇さん達が勝ってくれないと困るんだけど、それはそれとして相手が悪かったな、という感情もある。
「……まぁ、あれだけ強い子達が機を伺うレベル、なんだもんね」
「そうだな。生半可な技量では勝てない、無策で突っ込んだところで、制圧されるのが関の山だ」
「うーん……え、それはそれで大丈夫なの任せて」
「問題ない。……二人掛かりで一人に負けるものか」
アランさんの言葉の直後、皇さんが脈絡もなく動き出す。踏み込み、音もなく背後へと走り出す。入江さんもタイミングを合わせるように接近を開始して、東雲さんの意識が完全に入江さんへと向けられた。
「――残念、俺の方が速い」
斧で攻撃を受け止めた入江さんは笑う。攻撃の影から重ねられた弾丸を天波羽織で防いで、煽るように言葉を投げかける。
「お前の敗因は――――知性を持ってしまったこと、ただそれだけ」
「そうだな」
影を縫うように、腕を振れる隙間すらないほどの近さにまで潜り込んできた皇さんは凪いだ瞳のまま口を開く。手には透き通る水晶のような剣を携えて、いつも通りのテンションで言葉を紡ぐ。
「無垢を捨てたことが、お前の敗因だ」
一筋のきらめきが、東雲さんを切り裂いた。
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