第七十話 見せつけろ、その輝きを・中編
油断すれば一撃で戦闘不能になるだろうな、っていうのが理屈じゃなく本能で分かる。分かっていても止まれないし止まる気は毛頭ない。こんなにテンションが上がる戦いを中止なんてするものか。
「狙いは良いけど速さが足りてないな!俺を殺すにはもっと速さがないと」
「……」
勿論ただ速いだけじゃ俺を倒せはしないけど。攻撃の速度が上がったことで反応はしていないけど言葉は通じていることが分かる。東雲自身がどう思っているのかは分からずとも、言葉が通じているということは下手なことは言えないということだ。
「俺の認識だと怪異は言葉をちゃんと認識はしてないと思うんだけど……東雲に憑依してるから知能も上がってる?もしそうなら厄介だね、技量がないのに頭が回るとか面倒極まりない」
……攻撃が少しだけ苛烈になったな。ちゃんと煽られたら腹が立つ、という思考回路はあるのか。思っているよりかは知能というか、人間味があるな。長引くと東雲に影響が出るかもしれない。それはかなり困る。
ちらりと皇の様子を確認する。着実に近付いてはいるが、やっぱり最後の一歩が踏み込めないみたいだな。ここまで俺に意識を集中させても駄目なのか、つくづく東雲が優秀過ぎて困る。嘆いていても仕方がないのでもう一歩を詰める方法を模索する必要があるんだが。
「……」
ただ意識を向けさせるだけじゃ足りない、恐らくオートで展開されているであろう魔術を維持出来なくするくらいの勢いが必要だ。そのためには速さ以外の手段がいる。
「あるいは、思考を無に帰すくらいのインパクトがいる……」
しかも東雲の思考を止める、というよりは怪異の思考を止めなくちゃいけない。怪異が思考を止めるってどういう状況だろう、ベースは東雲と見て良いのか、それとも怪異の本能に従っているのか……そこまで考えたところで、攻撃のパターンが変化して、頬に一筋の血が流れた。
「……」
まるで、煽るような、嘲るような。東雲の身体を借りた怪異が、鏡のように頬を指さして首だけを傾ける。無邪気な指摘、無垢に見せかけた煽り。成程、煽られたから煽り返すのか。学習する頭があるのか、それとも東雲の思考に煽られたら煽り返すという認識があるのか……。
「…………ま、どっちでもいいな」
どちらにせよ相手は俺を煽った、なら相応の返答をしないと不作法というもの。別に速さ以外の手段を模索する必要はなかったな、今の俺なら、速さだけで充分目的を達成出来る。
「俺を煽ったこと、後悔させてやる」
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