第六十七話 あの日を暴く・後編
「……」
「それが最善だったかもしれない、対応は悪手だったかもしれない。真実は誰も分からない、だって事実は一人しか知らないんだから」
「…………」
「あてん、たーうあい……」
「そうだな。とあにとっては救いだっただろう、どちらも救われるには、個としてあるにはああするしかなかったんだから。アレン・アンシエントがどれだけあの選択を後悔しても、東雲透はその選択に赦しを与え、東雲泰誠は在り方としてその選択を糾弾する」
東雲さんは東雲に自由になってほしかった。だから肉体を無くしてくれたアランさんに感謝こそすれ恨みはしないし、東雲さんの”代わり”と思って生きて来た東雲は存在意義がなくなったが故にアランさんを責めるしかない。仮に東雲がアランさんを許そうと思ったら、自分が個として生きていくことを許容しなければいけない、と。
今の東雲の在り方は矛盾しているんだろう。もしかしたら本心ではアランさんを恨んでるのかもしれないけれど、少なくとも表向きはアランさんに懐いているし、恨んでなんていないようにみえる。けれど東雲さんの代わりだという認識は揺らぐことがなくて、自分に個としての価値があることなんて微塵も認識してなさそうだった。
「…………」
とあくんにとっての救い……というのは分かる。とあくんは東雲の遣霊で、東雲が幸せに暮らせるならそれが一番良いだろうから。きっと東雲が代わりになろうとすることを誰よりも嫌がっていただろうから。……だからこそ、この場にいると言い換えても良いかもしれない。
アランさんの行動は多分間違いじゃない。けれど現実としてここまで拗れたのは何故だろう。ヘブンが閉鎖されたから?真実が伝わらなかったから?それとも……誰もアランさんに言葉を掛けようとしなかったから?
「アランさんの選択は、きっと間違ってなかった。けれど、アランさんに必要なのは優しさじゃなく……ちゃんと叱って受け止めてくれる相手だった?」
「……どうだろうな。実力がなければ被害者が増えるだけだっただろうし、実力があっても当時どうにか出来るだけの準備は整っていなかった、と思う」
「じゃあ、アランさんを責める理由はないじゃないか。アランさんが自分を許せない以外の理由がない」
「そうだな。最初からそうだったよ」
それでもアランさんは自分のやったことが間違いだったと言ってほしかったんだろうし、今でもそう思ってるんだろう。死者の何もかもを消してしまうこと、尊厳を守るためとはいえ、死体すら残せなかったことを、ずっと悪いことだと思っている。
「……多分、アランさんに全部を背負わせるべきじゃなかった。嫌がられても嫌われても、言葉を共有して、認めなきゃいけなかったんだ」
アランさんが言葉を飲み込みがちなのは多分この辺りが原因だし、皇の対応は正しいんだろうなっていう想像もつく。その正しさを俺は知ってるからこそ、間違える訳にはいかない。
「――――任せても、大丈夫か?」
「うん。今度こそ……誰も悲しまない結末を、紡いでみせるよ」
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