第六十六話 あの日を暴く・中編
「これ、は……」
俺は今まで、アランさんが頑なにヘブンでの出来事を語らないのは自分の不手際、あるいは不可抗力で東雲さんを手にかけてしまったからじゃないか、と思っていた。あるいは東雲さんを守り切れなかったことによる後悔だと。でも、この記憶を見る限り……アランさんが語らない理由は、東雲さんの為、なのか?
「いやでも、まだ後悔の線はある……」
「アレン・アンシエントは」
「っ!?」
聞き覚えのある声がして勢いよく振り返った。誰かが……いる、見えないけど確かに。あの夢の中で出会った人物が、確実にいる。
「東雲透の名誉のため、そして、あの日自分が手に掛けた全ての職員達の尊厳の為、事実の隠蔽を選択した。子供がついた小さな嘘は、暴かれることなく事実となった」
「どうして、そんなことを……」
「東雲透が儀式実行の犯人だと言わせないため。自分が殺した職員だったモノ達が、手遅れだったと認めさせないため。……たった一人、自分を自分と認めてくれた人を、人として死なせたかったが故に」
多分、本来ならばすぐにばれるような嘘だった。調査が入れば確実に、何があったかなんて隠せるようなものでもなかったんだろう、と思う。けれど、調査は入らなかった。ヘブンは封鎖され、事実は隠蔽された。アランさんによって死者の尊厳は保たれ、そして……アランさんに、消えない傷が刻まれた。
「沈黙を重ねれば、痛みは一人で済むだろう。だが、罪も罰も……許しでさえも、真実を知る者がいなければ与えられなどしない。秒針を止めたままでは、先へ進めない」
「だから……俺に、この話をした?」
「あの場にいる中で、最も中立な存在だから」
中立……中立?確かに青藍さんはアランさんに肩入れするだろうし、宇月さんは東雲に肩入れすると思う。でも月野さんの方が余程適任に思えるんだけど……目の前にいるであろう人物からしてみれば、俺が一番中立の立場にいるらしい。
「東雲透が死んだのは儀式の存在に気付いたからだ。アレン・アンシエントが当時ヘブンにいた職員を殺したのはもう既に儀式に利用され、怪異と化していたからだ。東雲透は異変に気付いていた、しかしこの地がそもそも封印の地であったことと、自身が訪れるよりも前から儀式の準備が進められていたことで対応に遅れが出た。あの日、東雲透が死んだ時点で儀式は完了するはずだった」
「でも……アランさんがそれを止めた?」
「ああ。全てを破壊して、職員だった存在も全て殺して。利用されないよう、死体すら塵にした」
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