第六十五話 あの日を暴く・前編
東雲の足元から魔術式が現れた、そこまでは分かる。その術式に飛び込んでしまったのは……何でだろうな、咄嗟に”そうしなければいけない”と判断した訳なんだけど、何故と言われたら返答に困る。どうしようかこの状況、もしかしたらやらかしたかもしれない。
「違和感は……特になし。世界視は……?」
足元は少なくとも読み取れるから生物に呑まれた訳ではない、大丈夫。楽観視できる訳ではないけど致命的な状況ではない、まだ一応挽回は出来る、と思いたい。
「一旦現状の確認……」
俺が認識出来る範囲に人の気配はない。世界視の情報から察するにこの空間は元々はちゃんとした位相にあったらしい……少なくともゼロから魔術で生成した空間ではなさそう。もしかしたら魔術で生成された後まともな位相にあっただけかもしれないけど、俺も魔術で生成されたものを読み取れるかどうかが分からないので判別のしようがない。
音の反響的にとても広いことは分かる。視界が悪い訳じゃないけど薄暗い。本当にどこなんだろうなここ、どうやったら外に出れるんだろう。
「……ん?」
少しの間周囲を見渡していたら、見覚えのある後ろ姿が見えた気がして足を向ける。いやでも何か大きかったな……?一瞬とあくんの様に見えたんだけど、気のせいかな。こんな場所にいる筈がないから幻覚ではあると思うけど。
とあくんに近付いていくと何やら左右に長方形の発光体が現れ始める。なんだろうこれ、真っ白で厚みもない……何も写っていないけど、世界視によればこれはスクリーンらしい。まるで絵画でも飾るように、通り道の左右にいくつも並んでいる。
「…………とぉう」
「あれ、やっぱりとあくん……?」
サイズに目を瞑れば間違いなくとあくんだ。何故か何時もより大きい……俺と同じくらいの大きさだけど。幻覚であることを補強するように俺には一切反応しないまま、とあくんは真っ白なスクリーンの一つに触れる。
『────ごめん、なさい』
「え……?」
酷くぼやけた視界、脳をかき混ぜるような嘲笑と、曖昧に混ざり合う色彩。ぐしゃりと肉体が爆ぜるような音がして中から怪異が顕れる、俺が見ても分かるくらいには全てが手遅れで。……透、という小さな小さな声だけが、はっきりと聞こえた。
「透さんの…………記憶?」
悲鳴と剣戟の音だけが響いている。赤黒い何かが舞って、飛んで、視界を濡らす。……何が起こっているのか、は定かじゃないけど一つだけ言えることがある。
「東雲さんを…………東雲さんが殺された事実を、アランさんは隠蔽した?」
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