第五十三話 起源を辿る・前編
「シリウスさん!どうするんですかこれ!?」
「どうしようねぇ。俺もこんなことになるとは思わなくてびっくりしてる」
「驚いてるテンションじゃない!」
ははは、と言葉だけで笑うシリウスさん。後ろから追ってくる黒い触手のようなものを軽い調子で躱しながら縦横無尽に動き回っている。
最下層へと続く道に、なにやら大きな黒い塊……怪異がいた。それだけなら倒すだけで良い筈だったんだけど、どうやらその怪異が境界の操作権限を吸収してしまっているらしく、普通に倒すわけにはいかなくなったらしい。周囲に溶け込んでいてただでさえ視認性が悪いのに、どんどん膨張していく怪異に僕達はなすすべがない。
「まぁちょっと情報を整理しよう。うん、それがいい」
「のんびりしてる時間はないんですがっ……!」
「そうなんだよね。見た感じ膨張というか……空間に干渉して侵食してきてそうだし、放っておいたら封印も解けそう。とっても拙いね」
シリウスさんに焦っている気配が微塵もないんだけど……単純に分かりづらいだけかな、僕は回避で精いっぱいだけど、シリウスさんは思考を回す余裕もありそうだし。
「普通に倒すとさっき言った通り境界を弄れなくなって君が出られなくなる。まぁ数年経てば回復するけど、流石にね。だから方法としては一旦こいつを放置して最下層で直接主導権奪い取って……それから討伐かなぁ?どう思う?」
「どうっ……と…………言われてもっ」
「問題は最下層に行こうにもこいつがデカすぎて抜けられないってことかなぁ。どうも質量的な制限もなさそうだし……困ったね」
「……ここから、この怪異を抜けて前方に進めればいいんですか?」
「ん?んー……まぁそういうことになる、かな?」
「分かりました。じゃあシリウスさん掴まってください」
「え、出来るの?」
「やります」
思考を回す余裕はないけど、特性を起動する余裕はある。方向を確認しつつシリウスさんが僕を掴んだことも確認、杖をしっかりと握りしめて意識を集中、一点を貫くように前方へと砂を射出した。
「このまま抜き去る……!」
「うわぁ」
いくら僕が未熟だからってそこらの怪異に苦戦すると思わないでほしい。まだ鍛錬中とはいえリアムさんに手ほどきは受けているし、一応レイス支部に移籍する話だって出ている。……なんだか赤ちゃん呼びにも腹が立って来たな、シリウスさんに悪気はないんだろうけど、子ども扱いされているようで腹が立つ。理屈と感情は別なので。
「どいつもこいつも僕を未熟扱いしやがって……!子供扱いもいい加減にしろ!」
怒りに任せて踏み切った先、怪異を越えて辿り着いた場所は……どこかの、村の様だった。
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