第四十八話 目には目を・前編
東雲さんとの意思疎通が可能になったらどうなるか。そもそも何故、東雲さんは幽霊でも怪異でもなく――――貌と声を奪われていたのか。
「っ大量の怪異が……!」
「一旦移動しよう!宇月さん、東雲さんと先へ!」
「入江は!?」
「ちょっと数を減らす……!」
斧を構えて一つ、深呼吸。数は多いが脅威は感じない、ならいつも通りいくべきだろう。軽く地面を蹴って、一気に加速する。
速ければ速いほど、鋭ければ鋭いほどこの斧は強くなる。組まれた術式は滞りなく回って、今までが嘘みたいに刃は怪異を切り裂いていく。術式ひとつでこんなに変わるんだ、下手に火力を出そうとしなくていい分動きやすいすらある。
「いっそ悔しさすら感じるな……」
強くなることが嫌な訳じゃない。寧ろ喜ばしいことで、過程はどうであれ強くなったのならば喜ぶべきだろう。……うん、いいタイミングで強化出来たと喜ぶべきだ。
雑念が混じりながらも動きは迷うことなく怪異を切り裂き続けている。……思ったより簡単に数が減るな。とはいえ全滅には程遠い量がいるので適当に減らして宇月さん達の後を追った。
「宇月さん」
「あ、入江!大丈夫?」
「ええ。追手も撒いたので多少時間は稼げると思う」
「ありがとう。作戦会議したいんだけど良い?」
「うん」
改めて見ると、東雲さんは本当に東雲そっくりだな。東雲が成長したらこうなるだろう、という顔立ちをしてる。眉を下げるその仕草すらそっくりだったから、東雲が誤解するのも無理ないな、と内心思った。
「入江が戻ってくるまでに聞いた話だと……この騒動の発端はとある儀式で……人為的、らしいんだよね」
「……人為的?」
「そう。つまりどこかに犯人がいる」
「それは……」
ちょっとそれは想定していなかったというか、何で人間がわざわざヘブンを潰すんだ?っていう疑問が生まれたな。どういう経緯でヘブンが狙われたんだろう、他の支部で類似の事件が起こってないということは、何らかの意図があったとみて良いと思うんだけど……。
「というか、何で今になって再開したのかも分からないんだけど……」
「それに関しましては、恐らく……泰誠が来たから、というのと、重戦闘区域に人が増えたから……です、ね」
「重戦闘区域に人が……増えたから?」
「ええ。儀式のための生贄が揃った、と言い換えてもいい」
「……」
成程生贄……確かに今、ヘブンには充分な人がいるんだろうな。何も知らないままだったら出し抜かれて利用されていた可能性すらある。
「随分と……相手は、舐め腐った真似をしてくれてるね」
「うん。どうやら俺達の事を何も知らない、気付かない職員だと思ってるみたいだ」
そっちがその気なら…………俺達も、相応の対応を取らないとね?
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