第四十五話 停滞する思念・後編
「これは……」
「……想像とは違うものがある、な」
「はい」
俺達は最奥に怪異の本体ないしヘブンの騒動を引き起こした首魁がいると思っていた訳だが、目の前にあるのは魔術式である。騒動に魔術部門が関係していた……ということだろうか、それとも何か別の要因でここに魔術式があるのか?この魔術式を破壊すべきかどうかも俺達には分からない、……どうにかして雪代さんと連絡が取れれば良いんだが。
「人為的だった……?いや、でもあのときそんな気配はなかったはずだが……」
「破壊しますか?」
「……いや、先に周囲の探索をしよう」
「分かりました」
とはいえ、ざっくりと気配察知した中ではこの辺りに敵の気配はなかった。完全に術式しかない状況で、判断を迫られている。
「仮に……魔術式が原因だった場合、何がきっかけだった?そもそもリソースはどうやって工面してる……?封印術式だった場合はどうやって、誰が封じたのかさっぱり分からない……」
「レンリさんの言っていた儀式、というものに関係がありますかね」
「あるにはある……と思うんだが。時期とタイミングと挙動が合わない。何で今これは動き出したんだ?」
アランさんがヘブンに踏み入った訳ではない、きっかけとしてはそれこそ東雲の動揺……いや違うな、始まりはなんだった?夏音がヘブンに誘われたことか?
「魔術式なら範囲、があるでしょう。夏音はヘブンに直接踏み入ってはいなかった、それなのに誘われた。東雲もヘブンを気にはしていても踏み入れてはいない、……ここを起点として、別の術式がある?」
「……それこそ、ヘブンの周囲に、か?」
「有り得るとすれば、恐らく?」
もしくはアランさんにマーキングしている可能性もない訳じゃない。……どちらにせよ壊しておいた方が良い気はするな、試しに双剣で触れてみれば、いとも簡単に線が切れた。
「あ、おい!?」
「大丈夫です。……多分これは、壊してもいい」
魔力の流れを切るように、仮に自己再生するような仕様が組み込まれていても機能しないように重要そうな部分を重点的に破壊しておく。……空気が変わったな、なんとなくだが空間の作りが甘くなった気がする。
「上に戻りましょう。この空間、長くは保ちません」
「……そうだな。元来た道を戻る……必要もないらしい」
不自然に切り取られた空間の向こうには支部の廊下が広がっている。恐らく更に位相を移動することにはなるが……ここで立ち止まっている訳にもいかないので、躊躇いもなく二人揃って飛び込んだ。
「……?」
「アレンさん?」
「いや……怪異の質が変わったな、と」
怪異の質……か。呪い持ちの怪異が減るならば喜ばしいことなんだが…………現れた怪異は遂に呪い持ちしかいなくなっていた。嬉しくない変化だ。
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