第四十三話 停滞する思念・前編
「――――……」
「どうしましたか」
「いや……どこかで世界のバランスが、変わったな、と」
「世界のバランス……」
入江達の方で何かが起こった、とみるべきだろうか。俺は生憎気配察知くらいしか得意ではないので世界の異変には気付けない。少しの間確かめるように周囲を確認していたアレンさんだが、やがて納得したのか再び歩き出した。
「こちらに影響は」
「ない……と、言い切るのは些か不安だが、少なくとも現状の変化はないとみて良さそうだ。変化といっても悪いものではないようだし……」
「悪いものではないなら、気にしなくても良いですかね」
「現状は、まぁ。……一先ずは進むしかないだろうな、進んでいる内に何かしらの影響を受ける可能性は、ある」
「分かりました」
進むしかないなら大人しく足を動かした方が有意義だ、断続的に襲ってくる怪異に変化はない、アレンさんもそこまで戦えない、とは言っていたが降りかかる火の粉を払うくらいの技量はある。怪異の数は変わらないが、やってくる方向が定まり始めたな。
「……この先、何がいますかね」
「怪異の本体……だと、少し困るな」
「ああ、問題の首魁ではないから」
「アランが意識を落とした以上、そんな的外れな相手がいるとは思えないが…………」
言葉の途中、気配の異なる怪異を見つけて一気に加速し切り裂く。……耐性があった訳ではない、だが違和感はあった。少しだけ腕が重くなる、ような。……時限式の影響を及ぼす怪異か?
「大丈夫か?」
「はい。……アレンさん、あの怪異はどう見えましたか?」
「……対峙した時は、何も。ただ、お前が切り裂いた瞬間……呪いのようなものが溢れたのは視えたな」
「成程、では倒すことが害となるタイプだと判断して良さそうですね」
「何を喰らった?」
「少々腕が重くなりました」
テオがいれば何が起こっているのか分かるのかもしれないが、生憎俺には分からない。この程度の違和感なら戦闘に支障は出ない……が、複数体倒すことで効果が重複してしまう場合は話が別だ、正直いちいち判別なんてしていられないんだが。
アレンさんの緑の瞳がじっと俺の腕を注視している。特に何かが分かるとは思っていなかったのだが、何かを剥がすように手が添えられ、少しだけ重みが消える。
「……?」
「……駄目だな、矢張りこの状態じゃ上手く剥がせない」
「何が、視えてるんですか」
「言っただろう、呪いのようなものが溢れ出していた、と」
アレンさん、視える上に多少なら触れられるのか。アランさんも視える……いや、多分これはアレンさんの特殊性のような気がするな。……肉体は一緒なのにどうなってるんだろう。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




