第四十二話 運命を回して
「……行こう」
「はい」
緊張しながらも近付いていく。段々と詳細が分かるようになって分かるのは……成程、確かに顔が見えないな、これが認識阻害と言う事か。とはいえ白衣も着ているし見たところ金髪だし……東雲さんという認識で良いだろう、意を決して声を掛ける。
「すみません!」
「――――」
言葉を吐いているだろうに、俺達が認識出来ない。けれど宇月さんは気にせず一歩踏み出して真っ直ぐに顔を見据える。そうして真正面に立った宇月さんは、視線を揺らがせることなく口を開いた。
「はじめまして東雲透さん。俺は白糸宇月、重戦闘区域の医療職員です」
「――――……」
「はい。泰誠の同僚です」
「――――?」
「今泰誠は、重戦闘区域で実働部門の職員として働いています」
「……もしかして宇月さん、言葉が聞こえてる……?」
「いや、口の動きで判別してる」
それってつまり……宇月さんは認識阻害を受けていない?俺は完全に音を聞き取れないので一歩下がる。宇月さんは集中しているのか、じっと東雲さんを見つめていた。
「――――――」
「俺がここに来たのは泰誠を助けるためです」
「――――……?」
「すみません東雲さん、単刀直入に言います。今泰誠はヘブンのどこかに囚われていて、泰誠自身も、貴方の代わりになろうとしています」
「――――!?」
東雲さんの動揺を受けても宇月さんは揺らがない。どういう会話の流れなのかはさっぱり分からないけれど、どうやら宇月さんは東雲さんに何かを伝える……あるいは協力してもらおうとしているらしい。
「はい。知っています」
「――、――」
「報告書、読みました。だから貴方の言いたいことは理解していると思ってます。だから聞きたい、どうして泰誠は貴方の代わりだと思ってるの?」
「――…………。――――」
「……やっぱり」
「宇月さん、何て……?」
「泰誠があんなに自分が東雲さんの代わりだと思ってたの、当時の研究所にいた研究員達の刷り込みみたい」
「刷り込み……」
だから東雲さんは東雲を研究所から連れ出したかったのか。それでも東雲の認識が変わらなかったのは……余程根が深いというべきか、それとも何か呪いのようなものがあったのか。真相は分からない。
「貴方がそれを望んでいないことは分かりました、泰誠の思い込みは貴方のせいではないことも。……けれど一つ聞きたい、――――泰誠を自由にする気は、ありますか?」
「――――」
即答したな。じっと口元を見ていた宇月さんもふ、と表情を緩ませる。……この状況で否定することはないだろう、宇月さんは東雲さんの手を握り、不敵に笑う。
「迎えに行きましょう東雲さん。泰誠を連れ戻すんです。今度こそ、泰誠を自由にしましょう」
「――――は、い」
今ようやく、歯車がかみ合った。
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