第四十一話 最下層の住人・後編
「あれ?」
「どうしたの?」
不意にシリウスさんが足を止めたから僕も立ち止まる。何か見つけたのかな……そっと砂を展開させてみれば、数は少ないけど怪異がいた。
「あ、怪異……」
「おかしいな……ここって基本的に何も入れないはずなんだけど」
怪異がいること自体がおかしいんだ。じゃあ僕がいることもシリウスさんにとっては意外っていうこと?確かにあんまり人との交流があるようには思えなかったけど。
「しょうがないな……ちょっと待っててね、倒してくるから」
「あ、僕も戦えます」
「本当?」
「はい。こう見えても一応職員……怪異を倒すのが仕事なので」
「今の赤ちゃんってすごいねぇ。じゃあそっちの二体お願い」
「はい」
赤ちゃん……って言われるのはなんだかちょっと複雑な気分だな。別に嫌という訳ではないんだけど、呼ばれ慣れていないからか何だか収まりが悪い。気持ちを切り替えるように杖を握りしめて、示された二体に向き直る。
薄く砂を展開させて覆うように、動きを遮るように範囲を絞ってから一気に距離を詰める。僕にオリジナルのような長刀を扱うセンスはない、だから杖に砂で刀身を作って、一気に核を貫いた。そのまま引き抜くことはせず、砂を解除して照準を固定、再度砂で刀身を作り二撃目を放つ。
「おーすごい。器用だね?」
「ええと……ありがとう、ございます?」
僕が二体倒している間にシリウスさんは倍以上の怪異を仕留めたらしい。そんなに時間を掛けたつもりはないんだけど……シリウスさんってどうやって戦うんだろうな、武器らしい武器は見えない。
「何かやけにいるな……進路方向にいるやつは歩きながら倒そっか」
「あ、はい」
さらっとした調子で更に歩き出すシリウスさん。どんどん進んでるけど、一体どこに向かってるんだろう……?出口がある……んだよね?
「あの、今これってどこに向かって……?」
「え?ああ言ってなかったっけ?最下層」
「最下層……最下層?」
「うん。境界弄れるのがそこだけなんだよね」
ええと……つまり、今はどんどんこの空間の深いところに潜っていってるんだ。それなのに怪異が出て来たのは確かに異常事態かもしれないな……ここに封印されているものが負の感情、ということは変異スピードも早そうだし。
心なしか進めば進むほど怪異が増えているような気がする。シリウスさんも気になっているのか、時折首を傾げてはまぁいいか、と呟いてる。良いのかな、シリウスさんはどうにも言葉が少ないタイプの人のような気がしてきたんだけど……。
「んー……」
「シリウスさん?」
「ちょっと、不味いかも」
やっぱり不味いんじゃないか……!
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