第三十七話 放棄された支部・侵食
意識が飛んだのは時間にして一分程度。その一分で分断されるとか想定してなかったな。まだぼんやりする頭を振ってから周囲を確認する。
「……まぁ分かってたけど、この空間を支配してる怪異の深層部……かな」
「明らかにこちらを取り込む気では?」
「そりゃ、俺がいると空間を乗っ取られる可能性があるからね。アイツらからしてみれば邪魔だと思うよ」
俺からしてみれば勝手に空間を弄られてる形になるけどね。どうかと思うそういうの、勝手に奪っといて邪魔者扱いするんだったらこっちも相応の対応をするぞ。
一緒にいるのは月野だけ。分断された形になるけど……入江は残ってるしまだマシかな。宇月と離れたのはかなりの痛手ではあるけど、この空間に巻き込むよりかは幾分かマシだと判断して周囲の散策に移る。
「まぁ分かってたけど……そう簡単に出れるようにはなってなさそう」
「そうですね、悪意……というより敵意もかなりダイレクトになってますし、正面から倒さないと抜け出せない気が……」
「適当に暴れてもいいけど、邪魔が入らないようにするなら本体叩くのが確実だもんね」
多分ここは怪異の内部だから空間を叩くだけでダメージ自体は入る。だけど下手な暴れ方すると追い出される可能性があるんだよね、しかも元いた場所じゃなく復帰が面倒な場所に。だから俺達は素直に本体を叩くしかない。幸いこの位相内にいることは確定してるんだけど……。
「流石にしらみつぶしはな……」
「……多分俺、分かりますよ」
「え、本当?」
「さっきまでとは違って敵意があからさまなので」
月野ってそういう……特殊なモンが見えるんだ。確かに宇月の見えてるものが分かってたみたいだけれども。やっぱレイス出身の職員ってそういう特殊なものに詳しいのかな。
これ以上分断されても困るから警戒は怠らない……いや、警戒してても意識が一瞬遠のいたからあんまり意味はないか。どうやって俺の意識を遠ざけたんだろうね、そんな実力が近いとは思えないんだけど。何らかのギミックがあるなら先に把握しておかないと本体との戦闘時に影響が出かねない、そう思って月野に俺が意識を失いかけた時に何か変化はあったかと聞いたけど、ふるふると首を振られた。
「何の予兆も変化もありませんでした。だから……有り得るとしたら、怪異の能力として精神干渉があるんじゃないかと」
「うわ有り得そう……なんせヘブンにいる怪異だもんなぁ」
「はい。幸い……意識を奪う程度で精神をおかしくさせる、とかじゃないならまだマシなので」
「そうだね」
正気失って敵対するよりはマシか。俺自身に精神干渉を防ぐ手段はないからな……出来るだけ短期決戦を心掛けた方が良いかもしれない。
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