第三十五話 放棄された支部・異相
地面に衝突する前にどうにか姿勢を整え、勢いを殺して着地する。まだ幽撃を足場にすることは出来ないけど、一瞬だけ壁にすることは出来るようになっていて良かった。
「っ……宇月さん、大丈夫?」
「どうにか……入江のお陰で無事」
宇月さんは無事だけど、当然ながら夏音達の姿はない。完全に分断された……っていうことだよね、恐らく青藍さんと月野さんの方は明確に連れて行かれたような気がするから……位相はずれていても自由に動ける俺達の方がまだマシかもしれない。
「ここは……」
「ヘブンではあるんだろうけど……さっきとは位相も違うし、詳しい位置は分からないね」
「そうだよね……あのタイミングで分断してきたということは、俺達がいるのが都合が悪かったんだろうけど……」
その場合、危険になるのは残された夏音くんだ。ただでさえ一人きりになってしまっているのに。急いで戻りたいところだけど……俺も宇月さんも位相を渡る方法は生憎知らない。
「とにかく移動しよう。空間の綻びを探すか……元凶を倒せば戻れる、と思う」
「分かった。……戦闘になったら俺の事は気にしないで良いよ。戦えはしないけど、自分の身くらいは守れるから」
「え、……分かった」
俺の実力じゃ宇月さんを気にしながら戦闘出来ない。出来るだけ迅速に倒そう、と判断して歩き出す。
白い床と、点在する家具。果てが見えないほどだだっ広い空間をただ進んでいく。一応家具を確認してみたけれど恐らく模倣したものなんだろう、中途半端に床と融合した机や、ペンが合体した椅子、変な角度で立っている棚など……おおよそ使えそうなものは何もない。
「頭がおかしくなりそう……」
「早くここから抜け出したいけど……何も手掛かりがない……!」
せめて何か変化があれば別なんだけど、今のところ気配もなければ異変も起こっていない。……まさか本体はここにいない?そうなると俺達だけじゃどうしようもないぞ……?
「世界視にも反応はないし……」
「あ、入江、あっち……!」
宇月さんに示された方へ視線を向ける。離れていたせいで気付かなかったけど……誰か立ってる?近付く前に正体を探ろうと思って目を細めれば、まるでノイズでもかかるかのように存在が揺れている。
「え、幽霊……!?」
「でも入江が見えてるんだから……」
「そうだよね?じゃあ……あれ、何?」
「分かんない……けど、あの服装って……白衣じゃない?」
本当だ。白い裾がゆっくりと揺れてる。……じゃああの人は…………東雲透さん?
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