第三十二話 放棄された支部・陸
「多分この部屋じゃないかと……」
「どれどれ……あ、本当だある」
先程見た空間とほぼ同じ形で金庫があるな。違うところがあるとすれば……どこかからか飛んできたのか硬そうな布が覆いかぶさってるくらいで。
「っ……ちょっと全員離れてた方が良いかも。というか、目が良いやつ全員こっち見ない方が良い」
「え?」
「これ……この布、詳しく見ると目が潰れるんだよね」
「!?」
青藍さんの言葉に驚いたのか夏音くんが俺の目を隠すように手で覆ってくる。月野さんも自然な動きで宇月さんの目元を隠し、夏音くんが振り返らないように一歩前に出ていた。
「どういうことですか……?」
「詳細はちょっと覚えてないけど……有害物質だよ。何でこんなところに……」
「詳しく見ると目が潰れるっていうの、視界系から情報を取るタイプの特性を潰すため……ですかね?」
「まぁ大体そう。ついでにいうと皇とかテオみたいな……ちょっと目が良いタイプも影響が出る」
「範囲広いですね」
「本当にそう。一応対処法があるらしいけど、そもそも受けないに越したことはないからね」
そもそも何でそんな危険物がこんなところに無造作に置いてあるんだろう。風によって飛んできただとか、誰かが持ち込んだ……にしては不自然な場所にあると思う。流石に怪異が持ち込んでくることはないだろうし……。
カチカチとボタンを押すような音がして、鍵を回す音がする。青藍さんが金庫を開けているんだろう、中身が気になるところだけど……月野さんが動く気配はないし、夏音くんが手を下ろす気配もない。諦めて気配だけを探っていれば、青藍さんのん?という声が聞こえた。
「どうしたんですか?」
「んー……取り敢えずここから出よう。話はその後」
月野さんに背を押されたので、夏音くんの手を引いて宇月さんと共に廊下に出る。ちゃんと月野さんが扉を閉め直したことを確認してから、青藍さんは手に持っていた本を宇月さんへと手渡した。
「これさぁ、どう思う?」
「これは…………何かの実験報告書?」
「多分?」
「文字がかすれてて……ちょっと、読み辛いね」
「確かこの空間内にある個人情報って……消されてしまいますよね?」
「その筈なんだけど……比較的読めそうじゃない?これ」
「本当だ……」
金庫という一種密閉された空間に入っていたからかな、掠れているだけで塗り潰されていたりはしない。本の状態も比較的良く、時間さえあれば読み解けるような気がした。
「あの金庫の中には……この本だけ?」
「いや?他にも色々あったけど……東雲透に頼まれたのは、本だけだったからね」
「頼まれた?」
「そう。鍵を渡されたときに、ちょっとね」
ということは……この本、思っているよりも重要なものなのか?
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