第三十一話 放棄された支部・伍
「あの……その白衣の職員って、東雲に似ていませんでしたか?」
「は?」
「ええと……?それは、どういう意味ですか?」
青藍さんと夏音くんが揃ってきょとんとした表情を浮かべる。まぁ金髪の職員くらいならよくいるか……多分俺が似ている、と判断したことの方が珍しいだろう。
「どういうって……後姿が東雲に似ていた気がしたんだけど。あ、さっき世界視を使ったら暗証番号を打ち込んでる記憶……みたいのが見えて」
「待って世界視ってそんな記憶も視えるの?」
「俺も初めて出来ました。それで、その記憶の中で打ってた暗証番号がさっき言った1121です」
「成程?取り敢えず理解はした。その上で聞きたいんだけど……後姿が東雲に似てるってさぁ、……認識阻害貫通したってこと?」
「認識阻害?」
「お前実はそもそも認識阻害効かないとかそういうオチ?」
「いや鳥飼さんのときは認識阻害効いていたのでそんなことはないと思いますが……」
「じゃあ外装だった、ってこと?」
「そこまでは……」
流石に記憶の中で世界視を起動する、なんて器用なことは出来なかった。ただなんとなくだが、認識阻害を貫通した……というよりも、そもそも認識阻害がなかった、という方がしっくりくる。その場合どうして俺だけが認識阻害を受けなかったのか、となると……やっぱり、記憶だからだろうか。
「過去の記憶に認識阻害は適応されない……とか、有り得ますかね」
「まぁ……?有り得なくはないんじゃない?俺も本職じゃないから分からないけど、多分その辺って範囲をどこまでにしてるかによると思う」
「じゃあ原因はそれですかね」
「そうなる……かな」
完全に過去を消している訳ではない。寧ろ、見える部分だけを消すことで恐怖を担保しているのなら――――かなり仕草としては杜撰だな、と判断する。確かに分からないということは怖いけれど、隠蔽工作が杜撰ならいくらでも見抜けるものがあるから怖くない。
「東雲に似たってことは……アイツが、”東雲透”ってこと?」
「入江さん、その人物はどれくらい東雲に似てたの?」
「後姿だけしか確認出来てないけど……見た目は、かなり近そうだったな」
少なくとも事前情報なしで出会ったら見間違えるかもしれない。違いを上げるとしたら髪の長さと……服装くらいだろうか。正面から見たらまた違う部分はあるのかもしれない。
「東雲透が残したものが……金庫にあるってことかな。それなら探してもいいかも」
「金庫……は、僕場所分かるかもしれません」
「本当?」
「はい。行きましょう」
一度しか来たことない筈なのに良く覚えてるな夏音くん。一応地下への扉は閉め直してから俺達は後を追った。
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