第三十話 放棄された支部・肆
「……あれ?」
「どうしたんですか?」
地下を覗き込んだ青藍さんが変な声を上げる。何かあったんだろうかと思って俺達も覗き込んだけれど……普通に地下室があるようにみえるな。特に違和感とかはない。しかし夏音もまた覗き込んで素っ頓狂な声を上げた。
「階段が……」
「階段?別に普通の階段だと思うけど……」
「……ここ、前は階段なんてなかった。そもそも地下っていうか収納の筈だし」
ああなるほど、そもそも階段があること自体が異変、なんだ。わざわざ階段を増やす理由ってなんだろう、元が倉庫なのに光源があるようにみえるのも違和感、かな。
「この地下……やけに作り物めいてるんですけど」
「そりゃかなり拡張してるし……でも、宇月がそう言うってことは何か違和感があるんだよね?」
「やけに空間として整いすぎてる気がします。普通にいる筈の霊すらいない」
「霊って普通にいるんですか?」
「まぁ……?あんまり普通には見ないというか、弱すぎて観測が難しい筈なんだけど」
いるにはいるんだ、幽霊……。あんまり知りたくなかった事実だったな。月野さんと夏音は平然としてるし、青藍さんもそこまで気にしている様子がないから怖がってるのは俺だけみたいだった。……俺は例え見えなくても対処出来ない存在がいる、という時点で嫌なんだけど……強いな全員。
「地下……は、実際罠というか本体の腹の中みたいなもんではあったけど……」
「ここを後回しにした場合、次に向かえるのはその歪んだ扉の先?ですかね」
「ま、そうなるね。もしくは……」
青藍さんがポケットから何かを取り出す。小さな……鍵?今この場で出した、ということは使えるんだろうけど……何に使う鍵なんだろう。そっと世界視で情報を読み取る。
「多分この支部のどこかにあるんだよね、ロッカーか何かが。それを探してみてもいい」
「どこでその鍵を?」
「ここの戦闘区域で、白衣の幽霊モドキに渡された」
「……白衣の?」
「うん。多分夏音がみたのと一緒」
夏音くんが見たのと一緒?幽霊、ではなく幽霊モドキと言ってるのも気になるけれど……それよりも何よりも、鍵の使い道が分かって思わず声が出る。
「六番の金庫……」
「六番?」
「その鍵の、使い道です」
「金庫の鍵なんだ」
「そう読み取れますね」
金庫の場所まで探れるだろうか。普段よりも深く情報が読み取れるように更に意識を向ける。瞬間、情報ではなく映像が流れ込んできて思わず世界視を切った。
「っ!?」
「入江さん?」
「入江、大丈夫!?」
「は、はい……」
「何があったの?」
月野さんに支えられて、どうにか倒れることは防ぐ。今のは……過去の記憶、かな?暗証番号のようなものを打ち込む……白衣を着た職員が映っていた気がする。
「1121……?」
「え、急に何……?」
「多分、その鍵を使う金庫の暗証番号……だと思います」
どうして今回に限って映像が現れたんだろう。それと…………あの白衣の職員、東雲に似ていなかった、か?
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