第二十九話 放棄された支部・参
「崩壊する可能性があるのに取り込む意味って何だよ……」
「別の……それこそ、アランさん達の方の動きでバグったんでは?」
「別位相なら生成条件緩いだろもっとちゃんとしろ……!」
余程棚を取り込もうとしているのが不満なんだろうな……中身を取り出して棚を崩しながら青藍さんは毒を吐く。入っていた本を数冊めくってみたけど文字化けしていてよく分からなかった。ただ、世界視が告げた内容は”日記である”ということで。……内容をみられたくない、ということなんだろうか、元の内容を復元出来ないかと粘ってみたけれど、読み取れたのは”六番の金庫が開かない”という情報だけだった。
「これだけ壊しておけば大丈夫かな……」
「ええと……あ、癒着することはなさそうです」
「あの……不純物を取り込んだら、支部が崩壊する危険性があるんだよね?床に触れてるのは大丈夫なの?」
「なんか……よくは分からないんですけど、癒着する可能性があるの、この場においてはこの壁だけなんですよね」
不思議なことに他の壁や床、天井に触れていても勝手に取り込まれたりすることはない。そもそも機能がついているようには見えない……普段だって無秩序に不純物を取り込むことはないだろうから、そこまで警戒しなくていいんだろう。青藍さんも肯定するように「壁以外は大丈夫」だと発言してバラバラにした木の板を避ける。
「この辺に地下なかったっけ」
「そうですね。確かこの先……」
夏音くんが小走りになったので全員で後を追う。ここ、と示されたのは四角いハッチのような場所だった。世界視ではなく観測手が反応して、少し目を細める。
「何か脈動してない?」
「前の……部屋に、似てますね」
「待って前に夏音が閉じ込められた部屋ってこんな感じだったの?」
「はい。あのときは部屋全体が脈打ってましたけど」
脈動する部屋とか嫌すぎるな。青藍さんも初耳だったらしく若干引いていた。宇月さんはまじまじと扉を覗き込みつつ少しだけ首を傾げる。
「何もないのが逆に不気味なんですけど……」
「青藍さん、この地下って……」
「前は、元凶がいたところだったね」
元凶がいた地下であり、扉が脈打っているということは地下全体が”そう”である可能性も高い。……怪異の内部、とか言わないよな……?世界視でじっと見ても情報がとれないので”生きている”ことは確実だと思われるが、はて。
「……どうする、進む?」
「中に人がいるかどうかは……」
「俺は良く分かんない」
「何かがいるのは……まぁ、確実だと思いますけど。それが東雲かは俺じゃあ分かりませんね」
「同じく」
全員分からない、か。青藍さんもその答えは予測済みだったのか特に気にする様子もなく扉に手を掛ける。
「……?」
さっきからやけに観測手が反応しているんだが、どうしたんだろう。
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