第二十八話 放棄された支部・弐
少し荒れた通路を進む。外見よりも内部が広い……のはヒュリスティックにおいては正常なので気にならないが、世界視に映る情報がループしているのは気になった。
「……?」
「入江、どうしたの?」
「なんだか……情報が、おかしくて」
「情報が?」
「はい。壁が……不定期に組み換えられている、みたいな」
「……部屋の構造も変わってる可能性が出てきたな……」
「前回は、変わってませんでしたよね?」
「うん。復活したときにちょっと変異でもしたかな」
部屋の構造が変わってしまうと急な分断時や、やむを得ない退避時に影響が出る。多分、今来た道を戻っても出口には辿り着かないんだろうな、俺も周囲の壁が元々どこの壁なのか、は分かっても元通りにすることは出来ないから結構困る。
「やけに落ちてるものが散乱してるのも、構造を変えているから……?」
「まぁ……少なくとも目の前の壁は、そうだろうね」
眼前にそびえ立つ棚で出来た壁。支部の壁じゃないなら壊せる……と、言いたいところだったが棚と壁が癒着しているため、棚を壊せても壁が壊せない。ただ……放っておくと癒着するな、これ。
「この棚、取り込まれそうなんですけど……」
「まぁ棚くらいはいい……え、取り込むって何」
「そのままの意味です」
「待って、純岩盤に不純物なんて取り込ませたら意味なくなる……じゃあ寧ろ取り込ませるべき?」
「多分支部ごと崩壊しますよ」
「なんでだよ」
月野さんの言葉に思わず悪態をつく青藍さん。ひとつの不純物で全体が崩壊するのか……そう考えると大分脆いというか、思っているより脆弱性があるな。
「純岩盤ってそういうものでしたっけ?」
「いや、本来は勝手に修復されるし不要物は排出される……筈」
「まぁ本来は。ただ、今この支部は状況が違うので」
「どういうこと?」
「入江は分かるんじゃないかな……この空間の材質、普段とちょっと違うんじゃない?」
「普段と……?」
月野さんに促されるまま壁を凝視する。普段と違う部分……といえば、リソースの分配割合、だろうか。
「修復優先じゃなく……適応優先になってます?」
「詳しいことは分からないけど、多分そう」
「どういうこと?」
「修復優先にしたら多分潜ませられないんでしょうね」
「……だから、たまに壁に埋まってるの?」
「恐らくは」
……何が壁に埋まってるんだろう。宇月さんの言葉にちょっとだけ背筋が凍る。夏音くんも不思議そうに首を傾げているということは怪異じゃない訳で……本当に二人には何が見えてるんだ……?
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