第二十七話 放棄された支部・壱
怪異の気配はない。皇達が既に侵入しているから……にしては、やけに静かすぎるのが気になった。やけに遮音性が高い……のか?俺がきょろきょろと辺りを見渡していれば、青藍さんもまた少し周囲を見渡して呟く。
「……これ、位相ずれてない?」
「位相が?」
「うん。この空間、ただ怪異が支配してるだけじゃないみたいだね」
「前回……青藍さんが、怪異を倒したのでは?」
「良く分かんないけど復活してる」
早いな復活が。それにしても……位相がずれている上に怪異が空間を支配してるということは、不意に皇達と合流する、なんてことはないとみて良いのか。擬態する相手はいないと思っているけど、考える手間が省けたのは良かった。
「取り敢えず……どこにいるのか、あてはあるんですか?」
「夏音、どう思う?」
「怪しいのは……地下か、あの歪んだ扉の先じゃないですかね……」
「歪んだ扉?」
純岩盤で作られている以上、変形や破壊は基本的に有り得ない。青藍さんもそれを知っている筈なのに”歪んでいる”という発言に疑問を抱いていないということは……騒動の際に、何かあった?
「何か……見えないのに、沢山いる気配がある……」
「実際いるからね。俺達は干渉できないけど」
宇月さんのぼやきに月野さんは事も無げに返す。存在はあるのに干渉出来ない……のは、位相が違うという意味なのか、それとも幽撃ですら触れられない何かがいる、という事なのか。あんまりその辺りの細かいニュアンスは良く分かっていないけど、俺は何も感じていないからどちらかといえば後者じゃないかな、と思っている。正直幽霊とか信じたくないんだけど……存在していそうですごく嫌。
「真っ直ぐ進むなら、こっちです」
「……迂回路ってある?」
「やっぱりあれ幻覚じゃないか」
「何がみえてんの?」
「その……沢山の、手招きが」
宇月さんの言葉に思わず喉が引きつる。見えてなくて良かったというべきか、それとも見えないからこそ怖いと言っていいものか。聞いてしまった以上色々と想像してしまって非常に良くない。怪異だったら何も怖くないのに……!
「そんなあからさまに罠、みたいな場所は通る必要ないよね。回り道しよ」
「分かりました。こっちです」
夏音くんが足を向けた方向へ進む。何かがいるのなら非常に嫌だけど、幸か不幸か俺は何も見えてないから言われなければ気付かない……少なくとも世界視で何かが見えたりはしないからそのまま突き進む。こうなると触れられなくて良かったと心底思う。何も見えてないのに感触だけがあったら俺は気絶する自信があったぞ。
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