第二十六話 立ち入る
何かが肌を撫でるような、そんな不快感がずっとある。部外者だからだろうか、油断すればすぐにでも弾かれてしまいそうな、明らかに歓迎されていないような、そんな空気感の中歩いている。
ヘブンに辿り着くまでは大量にいた怪異も、放棄エリアを境にとんと見かけなくなった。意思がある……と見て良いだろうか、少なくとも敵対されているのは重戦闘区域のみ、とみて良さそうだが。
「アランさん、大丈夫ですか」
「……ええ」
顔色は悪いがそれ以外の変化はない。怪異の数もそう多くはないし、何かあるとしたら中心部だろうか。気配察知は解かぬまま、アランさんの様子を伺う。
「正面からは……入江さん達の行動に支障が出るかもしれませんので、裏に回りましょう」
「はい」
他の支部に比べると、ヘブンは割と閉鎖的というか、窓や扉が極端に少ないな。少ないというより、視認できる範囲には見当たらない。余程外から見られたくないのか……あるいは、外を見たくなかったのか。レイスですらもうすこし開放的な雰囲気だったんだが、精神干渉を得手とする怪異相手だとここまで厳重にする必要性があるのかもしれない。ぐるりと回り込んだ先、ぽつんと一つだけある扉の前でアランさんは立ち止まる。
「こちらですね」
「……待ち伏せされてます」
「ええ。ですので、無理矢理突破しましょう」
双剣を構え、アランさんが扉を開けた瞬間を狙って突きを放つ。怪異が外に溢れ出る前に切っ先が触れ、そのまま貫いた。複数体がまとめて消える感覚があって、残滓のような気配を振って払う。室内は思っていたよりも荒廃してはいなかった。それよりも怪異を貫いた際の感触に違和感を覚えて首を捻る。
「……幽撃が必要な怪異じゃ、ない?」
「本来の傾向は精神干渉ではありますが……長期間放棄されていたので、変異した可能性はありますね」
幽撃が必要な怪異だけではない、ということか。正直幽撃の切り替え程度ならそこまで苦ではないが、攻撃耐性などを有していた場合厄介さが跳ね上がるな。方向性が変わるほどではないと思っているので、基本的には幽撃が必要であるという認識で変わりないか。
「……内部は、辛うじて部屋割り等は同じようです。とはいえ何が潜んでいるのかは不明なので警戒は怠らないよう」
「はい」
会話の最中にも怪異が飛び掛かって来たので薙ぎ払う。数こそ多いが対処出来ないほどじゃない、一撃で倒せる内はそこまで気にしなくてもいいか。室内だと武器が長すぎるのか、アランさんは素手で怪異を対処している。……また藍沢先生に怒られそうだな。
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