5. リオとボルグ
「リオ様、ささっ、早くご準備を。」
侍従からでさえ、扱いはぞんざいだった。
リオは、賢王の末の息子であり、味噌っかすである。
魔法は箒で飛ぶことしかできず、勉強もからっきし。 城の端にある、今は使われていない管理小屋に追いやられ、忘れ去られていた。
この魔法の世界では、子どもでさえ火を起こせる。
箒で飛ぶことしかできないリオは、侍従にとってさえ尊敬に値しない王子だった。
リオは急いで管理小屋へ戻った。
「リオ、やけに早かったな。どうだった。嫌なことは言われなかったかのぉ……。」
心配して管理小屋で待っていてくれたのは、ボルグだった。
ボルグはドワーフで、王宮の用具の管理人である。 リオの家のすぐ近くに居を構え、壊れた用具の補修や森の管理をしていた。
ドワーフは、この国では身分が低い。 魔法が使えないからだ。
手先の器用さに優れていても、魔法がすべてのこの世界では、魔法を使える人間の方が上とされていた。
ボルグは森で静かに暮らしていた。
だが、年端もいかない子どもがたった一人、古びた管理小屋に押し込められているのを不憫に思い、時間があれば様子を見に来ていた。
リオも、そんなボルグにとても懐いていた。
「ボルグ、僕、神樹まで行かなきゃいけなくなったんだ。よくは分からないけど、ヴァルディア王国を救うためにさ。」
リオは鞄に荷物を詰めていく。
ボルグから貰ったナイフ。
ボルグから貰った犬笛。
ボルグから貰った帽子。
忘れ去られた王子には、城から最低限の身の回りの物しか与えられていなかった。
「リオでは無理じゃないのか? そんなひょろっこい身体で。」
ボルグは心配そうに言う。
「僕も無理だって伝えたよ。 ただ、僕にしかできないんだって。
父上に生まれて初めて頼られたから、嫌だとは言えなかったんだ。」
リオは、ほんの少し誇らしげに答えた。
「そうか……リオは決めたのか。」
ボルグは寂しそうに立ち尽くした。




