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『挿し木物語』  作者: 蒼


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2. 世界のことわり

約1000年前、神が突然遣わした。


地面が光り輝き、一本の木が芽吹いた。

その木は、あっという間に大木となった。


神の悪戯か、世界を救うためなのか。

その目的はわかっていない。


ただ、その大樹は世界のバランスを変え、人類に力をもたらした。

人類は神樹と呼び、崇め奉り続けた。


ある人間が、神樹の小枝を拾った。

その小枝を振り上げると、小さな火が起きた。


これが、魔法の世界の始まりである。


❖❖❖❖


「トム、火を付けとくれ。」

トムは魔法の杖から小さな火を出す。

竈の火程度なら、小さな子供でも出せる。

「お母さん、付けたよ。」

「ありがとう。じき晩御飯だ。」

竈の鍋から湯気が立ち、煙突から煙が流れる。

夕飯時になると、どの家の煙突からも煙が立ち昇るのだった。


街灯の灯は、魔法の杖であっという間につく。

日が落ちる頃、街灯士が箒にまたがり、一斉に灯りを付けていく。

そして日が昇り始めると、一斉に灯が消されるのである。


「お母さん、火が付かないよ。」

竈の火を付けようとしたトムが、お母さんを呼ぶ。

「あらあら、杖がしまいちまったかね。

今、新しいのを出すよ。」


魔法の杖は消耗品である。


小さな子供から大人まで、人類なら誰でも魔法が使える。

魔法の杖を使えば。


当たり前のように、魔法は生活に溶け込んでいた。


「最近、杖がなんだか高くなってきたと思わないかい?」

「そうそう。なんでも最近、杖を出し渋ってるらしいんだよ。」

「本当かい? エルシア王国がかい?」

「そうだよ。うちに養ってもらってるのに、杖をよこさないらしいんだよ。」

「なんて恩知らずな。」

「そうだろ……まあ、王様がなんとかして下さるだろうよ。」

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