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『挿し木物語』  作者: 蒼


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1. プロローグ

ザシュ――。

刃が風を裂く。

首が宙を舞う。

剣身を伝う、一滴の赤。

その赤い雫は、 乾ききった石床へ落ちる。

石畳の隙間へ、 ゆっくりと吸い込まれていった。


騎士隊長は静かに剣を掲げた。

「……勝った。」

勝利の角笛が戦場を貫く。

歓声が波となり、城壁を揺らした。

兵士たちは剣を掲げ、互いの肩を叩き合う。

涙を流す者。

膝をつく者。

ようやく終わった。

ようやく貧しさから解放される。

誰もがそう信じていた。


歓声の輪から少し離れた場所で、一人の男が目を細める。

「……これで神樹は私のものだ。」

その唇は笑う。

「世界は私のものだ。

我々が苦しんだ罪お前達に返してやる。」

「我々が失った富、我々に返して貰う。」

「その頂きにいるのが私だ。」

憎悪と金に目が眩んだ男が高笑いする。


その時だった。

「後ろを見て下さい!!」

物見台の兵士が、声を張り裂けんばかりに叫ぶ。

歓声が止む。

幾千もの兵が、一斉に空を見上げた。

青く澄み渡る空。

一筋の光が、彼方へと伸びていく。

その光を追いかけるように――


一人の少年が、箒で飛んでいた。

胸に小さな挿し木を抱え、

風に髪を揺らしながら、

必死な顔で。

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