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しあわせの国  作者: 狼眼


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闘いの幕が上がる前に

「そうか、あの性悪狸じじいが決断したか・・・。」

「え、なんで王国がこの町に派兵するんですか?同じ国内ではないんですか?」

「・・・それは・・・。」

「まぁ、簡単に言うと、領主の俺が王様の言う事を全く聞かないからだろうな。」


男爵は笑いながら教えてくれた。

昔、男爵の拝命と同時に、領地を任されたデュアルは、国王の悪事を色々な角度から認識していた。

冒険者時代の繋がりから、隣国との関係も良好なため、町を維持することに関しては全く問題がなかった。

拝領の儀の際に、呪いをかけられたが、それは簡単にレジスト出来ており、王国側の神官にも手を回してあるという。

領主となった後に、国王からの命令、例えば死の森の開拓や隣国への諜報活動など、様々な命令を無視し続けたのだった。

王国側からすれば、明らかな謀反であり、派兵する条件も十分にあるというのだ。


「国に喧嘩を売るって・・・。正気じゃない・・・。」

「そこは、国王のミスも多いと思うよ?アルバート君だっけ?君が国王だとした場合、国内最強の剣士、最強の魔術師、最強の精霊術師を辺境の地へまとめて送るかい?」

「・・・そうですね。私なら、3人のうち2人は、王城の守りの為として、中央に残すと思います。闘いがあっても、辺境の地にいるのでは、手駒としては役に立ちませんからね。」

「だろ?そして国王は、自らが手にした呪いの術に絶対の自信を持ってるのさ。だから、多少適当な事をしたとしても、どうとでもなる。ってね。」

「でも、魔獣の襲撃に対して呪いは全く役には立ちませんよ?」


勇者パーティーと呼ばれていたヴァールさんも、王国の情報を色々持っている様だ。しかし、呪いは混乱を与えるだけで、魔獣に対する防御や攻撃の役には立たない。

国王は一体、何を考えているのか・・・・。


「その辺は、俺から話そう。・・・まず、王国側は、魔獣の襲撃を恐れてはいないんだ。」

「は?あれだけの規模の死者を出しながら?・・・ありえない。」

「王国が魔獣の襲撃を恐れていない理由はいくつかある。例えば、・・王国に攻めてくる魔獣に関していえば、積極的に人を襲う行動はとらないって事だ。」

「・・俺たち、襲われましたよ?」

「それは、恐らく手負いの魔獣だったのだろう。魔獣の目的は、侵略ではない、探索なんだ。」

「探索?・・・って以前言っていた・・・。」

「そう、魔獣たちの目的は、森の民が守っていた宝珠を探し出し、取り戻す事。」


でも、それって、本末転倒な話ではないか?国を強くするため、かどうかは知らないが、国王は宝珠を手に入れた。その宝珠を探すために魔獣が襲来し、街が壊れ、損害が出る。全く理にかなっていない。


「そして理由の2つ目が、魔獣の襲来を利用して、国民からの搾取を続けているという事。」

「搾取ですか?搾取する余裕なんて無いように思えるんですが・・・。」

「アルバートは、王国内で過ごしていた時、裕福な暮らしは有ったか?」

「・・・闘いで孤児多かったり、物が少なかったり・・って感じです。でも、みんなしっかり働いていて、復興に力を入れていました。なので、活気は有りました。」

「うむ、では、働いている中に、今日1日で2体もみた巨大な魔法生物や、精霊はいたか?」

「いえ、全て人の手でした。」

「ゴーレムや精霊の力を借りれば、街の作り直しはかなり楽に行われるはずなんだ。それを、「復興のために金が必要だ。」とか「戦時中に物資が少ないのは仕方がない、質素倹約!今はつつましく生きよう。」だとか、適当な事をうたって、商人や国民から金と時間をむしり取っているんだ。」


「戦時中に、見せかけている・・・って事ですか?」

「そういう事だな。しかも!魔獣が増えているのも王国に原因がある。」

「森の民の仕業ではなく?」

「それは森の民が関わっていると言ってほしいな。」


ガーラさんが森の民代表として口をはさんできた。


「そもそも、瘴気があふれ出る原因が、国王が行っている呪いのせいなのだ。あの小僧の短慮な行動で、王国周辺には瘴気が溢れている。それをスライムたちが浄化しようと吸収する。スライムの許容範囲を超えると、捕食を通じて屈強な魔獣が誕生するんだ。」

「精霊祭の前夜祭に教えていただいたことですよね。しかし、国王をつかまえて、小僧って・・・。」

「そういった自然に発生する魔獣は、正直手に負えない。森も国も大きな損害を受ける事になる。そのため、森の民は瘴気の回収を行い、その瘴気を媒介として害の少ない魔獣を作り宝珠の回収を試みているのだ。」

「わざわざ魔獣を作らなくてもいいのでは?」

「では、集まった瘴気はどうするのだ?放っておいて厄災級の魔獣の誕生を見たいか?」

「・・できれば見たくないです。」

「あぁ、あれは厄介だったな。」


男爵が昔を思い出すよに目を細めて天井を仰ぎ見る。


「戦ったのですか!」

「ああ、20年以上前にな。・・・その結果男爵として拝領したんだが・・もしかしたら、国王は厄災討伐係として、俺たちを死の森の近くの辺境の地に拝命したのかもな。」

「・・・デュアル。拝命の儀の際の言葉にあったぞ。・・国が危うき時、国に害を及ぼす者が現れし時、其方の力を持って排除すべし・・・って。」

「おまえ、あれ、聴いてたの?無駄に偉いね。」


そうか、この人たちは、国王のしりぬぐいをやらされようとしていたのか・・・。

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