影の中から
ゴーレムの設置を見届けた後、残された男連中は、隠されている通路へ移動し、精霊との約束を果たす。
お陰で精神力は削られたが、ガーラさんが早めに切り上げたことで、いつもよりはまともな状態で帰路に就くことが出来た。
洞窟を出ると、案の定馬車は無く、帰りは徒歩がかくていする。
「おいデュアル。気づいたか?」
「当たり前だろ?精霊が騒いでいたからな。」
「侵入者・・・。4つだな。」
「あぁ、だが、騒ぐほどでもない。と思うぞ?今日は早めに切り上げたからな。俺たちで行けるだろ?」
「男爵様、俺たちって、私も入ってますか?」
「あぁ、あ、お前、武器は持ってきていなかったな・・・。」
「えぇ、鉄は嫌われるからって・・・。男爵様は?」
「俺の得物はミスリル、精霊銀とも呼ばれているからな。あいつ等にはなじみが深いものなんだ。」
「ガーラさんは・・・・武器なんていらないですよね。」
「そんな無粋なもの。」
「ですよね~。私、無手ですが、どうしましょうか?」
「・・・仕方がない。小僧、お前は精霊術で戦え。」
「え、やっと精霊に触れる所まで来たばっかりなのに、もう実践ですか?術も何も分かんないですよ!」
「よし、あの木の下でレクチャーしてやる。」
男爵はそういうと、侵入者を一旦無視して、精霊術のさわりを教えてくれることになった。ガーラさんの方が強力な精霊術師なのだが、人に教えるには向いていないらしい。
「・・・だから、お前に一番なついていた精霊なら、いけるかもしれない。」
「でも、精霊の使役なんてまだ・・・。」
「違う!使役なんて考えるな。力を借りて、共に戦うんだ。」
「力を借りる・・。力を借りるための呪文は?わかんないですよ!」
「精霊術に呪文は必要ない。基本的にな。精霊に語り掛け、対話をする。それが精霊術だ。」
「対話・・ですか。」
「そうだ、だから、精霊にこう語りかけてみろ・・・・・・・・・・。な?」
「それで行けるんですかね?」
「多分な!」
「終わったか?獲物は巣を出たぞ?」
侵入者は、ストーンゴーレムを作る前に、こちら側に侵入していた様だ。壁の隙間に身を隠していたか、魔法で穴を掘って隠れていたか、いずれかは分からないが、こちらを警戒しながら洞窟内から出てきた。
全体的に黒い衣装に身を包んでいるようないでたちで、地を這うようにスルスルと移動している。
やたらと小ぶりな奴だな。まさか、黒いスライムか?
「男爵!あれって、黒いスライムじゃないですか?」
「違うな、黒スライムは、こっち側には来ないんだ。それに、あいつらは、スライムと違って知性がありそうじゃないか?」
「デュアル、あれは魔法生物だ。」
「だろうな。」
魔法生物、鉄の剣や鈍器の攻撃は効き辛く、魔法に対しても抵抗力がある生物だ。
精霊の攻撃に対してはどうだろうか?とすると、頼みの綱は、男爵のミスリルソードだけ?
俺は、一歩下がって男爵を盾にする様に移動する。
「まずは、お手並み拝見・・・ってな。」
男爵は相手から目をそらすことも無く、俺の襟首をつかんで引っ張る。と、そのまま俺を前に突き出した。
「やってみ!」
男爵!スパルタですね!!ガーラさんは?・・・・腕を組んで立ってるだけですか・・・。
やってやる・・・。やってやるぜ!
『闇と精神の精霊よ、あいつらの足元に現れてみてくれないか?』
『 』
「ちゃんと精神力を込めて!!」
『闇と精神の精霊、あいつらに体当たりを!』
『 』
「ダメかな。」
『闇と精神の精霊!助けて!!』
『・・・いいよ?』
精霊の声が聞こえたかと思うと、俺の影の中から黒い塊が湧き出した。あいつらと同じ位の小ぶりなサイズだ。精霊は、一瞬震えたかと思ったら、パッと消えてしまった。
失敗か?
そう思った直後、侵入者の1体が、精霊の体当たりを喰らって、空中に霧散していた。
「つっよ~い!!一撃!一撃ですよ!!」
「騒ぐな!ほら、こちらの場所を察知された。・・・・仕方がない、俺がやるか・・・。」
「あと3対くらい俺が!精霊で!」
「無理だ。お前はもう、精神力が残っていない。」
「あっ・・そうです。すみません。」
「心配するな、あの程度、大した運動にもならん。」
そう言うと、男爵は背中のミスリルで出来たバスタードソードを構えた。
黒い侵入者は、残り3つ。地面を滑る様に、かなりのスピードで這い寄ってくる。
黒い侵入者は、絶妙な間隔を開け、連続での攻撃を狙っている様だ。
そいつらの容姿が視認できる距離になった。・・崩れたスライムみたいな・・。
「ブロブか・・・雑魚が!」
男爵が叫ぶと、バン!という大きな音がして、前方の魔法生物が消し飛んだ。
「・・・男爵、今のは魔術ですか?」
「?いや、剣で切っただけだが?」
「いやいやいや、剣で切っただけで、あんな破裂音しないですよ。しかも、そこそこの距離がありましたよ?常識的に無理でしょ?」
「小僧、お前の常識で語るな。」
「それよりも、次がいるみたいだぜ?」
「早くもゴーレムが破壊された様だ・・・。」
「これは、ちょっと強敵かもな・・・。」
男爵が言う強敵って・・・・。




