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しあわせの国  作者: 狼眼


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ストーンゴーレム

昨日の夜、ビルットたちが男爵家に戻ってきた頃、俺は男爵に呼ばれていた。


「アルバート、明日は随員メンバーが増えるから、馬車で向かう。集合場所は西側の厩舎横だ。」

「わかりました。明日は、だれが付いてくるのですか?」

「・・誰だろうな?」


男爵はニヤリと笑う。「書類整理があるから・・・。」とだけ言い残して、男爵は自室に帰っていった。

今日も精霊に力を供給し続け、心身ともに疲れているだろうに、領主というのは忙しい仕事なのだろうか。

俺は、後は寝るだけなので、客室でのんびりしていよう。あいつらは3人で風呂に行ったみたいだし、先に寝よう。



翌朝、厩舎の横で皆さんと合流する。今いるメンバーは、男爵、ガーラさん、ハンナさん、あとは・・メイドの・・誰だっけ、自己紹介してなかったな。


「おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。今日一緒に向かう方は、こちらのメイドさんですか?」

「いや、メイだけではなく、ハンナも一緒に来る。」


へぇ、メイドさんの名前はメイさんね。覚えやすくていいや。

それにしても奥方様までくるとは。奥方様はメイジだったはずだが?


「男爵、奥方様はメイジだと記憶しておりますが、精霊術も使えるのですか?」

「いいえ、私は魔術特化型よ?この宿六みたいに器用貧乏じゃないの。」

「宿六って、領主を捕まえて・・・。ちゃんと稼いでるだろ?」

「よく言うわよ!精霊祭の10日間、食堂での飲食無料ですって?毎年毎年、たいそうな大盤振る舞いです事!」

「だから、あれは・・・。必要な事なんだよ。」

「奥様、や・・男爵様、そろそろ出発した方がよいかと。」

「メイ、いま”や”って言ったな?”や”ってなんだ?」

「ほら、行くわよ。」


どうやら、メイさんはハンナさんの専属メイドの様だ。常にハンナさんの傍らに寄り添っている。

男爵は立派な方だと思うんだが、身内の目は厳しいのだろうか?



俺たちは洞窟の入り口で馬車を降り、洞窟内を進んでいく。緩やかな下りの傾斜が続く道だが、帰りは力を使い果たしていることが多いので、地獄の上り坂となっている。


「・・・あれ、こっちの道ではないのですか?」

「あぁ、今日はまっすぐの道だ。」


洞窟の中は、ここに来た時とは違い、空気のよどみがない。鼻につく臭いも消え、所々に苔類も見られるようになっている。たった数日の精霊との対話で、ここまで変化があるとは驚きだ。

暫く歩いていくと、藁が敷いてある場所に出た。

数日前に死闘を繰り広げ、敗北し、寝かされていた場所だ。


「この辺かしら?」


ハンナさんが声を掛けると、メイさんが荷物を用意する。

ハンナさんには黒いローブの着付けを行い、そっとスタッフを手渡す。

ローブは金糸で刺繍は施されたローブで、とても高級な素材が使われているように思える。首から下げた赤い宝石が付いたネックレスも魔術的な意味があるのだろう。そして、手渡されたスタッフ。おそらく古代遺跡からの出土品クラスの品だ。木で出来ている様にも見えるが、微かな光も反射するほどに光沢がある。

ハンナさんの装備を見ていて気付かなかったのだが、メイさんも魔術用のローブを着込み、ワンドを手に持っている。彼女もメイジだったのか。


「では、メイ、私に続きなさい。」

「はい、奥様」


二人は通路の空間に向かって杖をかざし、力ある言葉を紡ぐ。


「「大地に眠る英雄の魂よ・・汝の力を顕現せよ!クリエイト・ゴーレム!」」


古代語の意味はよく分からないが、最後の”ゴーレム”は理解が出来た。

術が発動すると、洞窟全体が揺れるような地響きが起こった。

洞窟の通路が盛り上がり、人型になり、更に大型化していく。

二人の集中が終わったころには、目の前にあった空間が岩で覆われてしまっていた。


「これは・・・あのゴーレムは!」

「そうだ、お前たちが苦戦したゴーレムは、この女性が作ったサーバントなんだ。」

「・・・へぇ、アルバート、もしやと思っていたけど、ゴーレムを壊してくれたのは、あなただったのね?」

「あ、・・・ごめんなさいゴメンナサイごめんなさいゴメンナサイ・・・。」

「別に、怒ってないわよ?・・・やるじゃない。」


そう言って、軽く微笑んでくれたハンナさんは、メイさんと一緒に家に戻っていった。馬車で。


「ガーラさん、ここを塞いでしまったら、向こう側の洞窟環境が変わらないのではないですか?」

「あちら側を快適にしてしまったら、沢山の人が来てしまうだろ?そんな事になったら、迷惑なんだ。」


ガーラさんの代わりに男爵が答えてくれた。それに、ハンナさんの作ったゴーレムで、人を傷つけたりしたくないらしい。


・・・あのゴーレム・・・めっちゃ狂暴でしたよ?男爵。

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