精霊の国
『もう、立ち上がっても大丈夫だ。』
男爵が、岩だったものから腰を上げる。
ガーラさんはまだ座っているが、目の前に青白い光を集めている様だ。
『なんだか清々しい風が流れていますね。』
『あぁ、あいつが風の精霊を集めているからな。』
『集めて、どうするのです?』
『より上位の精霊を呼ぶんだ。』
『男爵様は手伝わなくていいのですか?』
『俺の力では、全く及ばないから、無駄に疲れるだけさ。』
そう言うと男爵は、あたりの風景に目を向ける。今、この洞窟は精霊界と繋がっているらしい。
急にガーラさんの傍から風が強まりだした。すごい。あれが熟練の精霊術師。
『久しいな。森の民の芽吹きよ。もっと顔を出さぬか。』
『ジン、あんたが来たのか。てっきり順番通りシルフが来るかと思ったのだが。』
『ヌハハ、あんな小娘に任せておけるか。儂も腹が減っておるのだ。久々に力をくれんか。』
『あぁ、そのために来たのだからな。今日は、デュアルとアルバートを連れてきているから、たっぷり喰らえ。』
『デュアル?あぁ、こいつは力はあるが、雑だからな・・・。アルバート、は、初めてか。どれどれ・・・。』
ジンが額に触れたと思ったら、急激に精神が消耗していく。辛い、まではいかないが、脱力感が襲ってくる。座ったままで良かった。立っていたら倒れていたかもしれない。
『うむ、まぁまぁだな。こいつはデュアルよりも上手くなるだろうな。』
『美味くか?』
『そうとも言う。』
ジンが離れると、薄暗い光が寄ってきた。これは?精霊なのか?
『それは、精神の精霊だ。お前は気に入られているからな。逃げずに力を分けてやれよ?』
『はぁ。まぁ、精霊は、好きだと思うので、近寄ってきてくれると嬉しいです。』
『仲良くしておくと、いつかは力を貸してくれるかもな。』
『期待しないで待ってます。・・おいで。』
こうやって、精霊が見えるのは楽しい。普通の町ではまだ見えないが、この洞窟や、精霊界では見えるようになった。
さっきはジンの声も頭に響いてきた。精霊って結構声も大きいのな。
『おい小僧。お前の近くにいた、水の精霊も力が欲しい様だぞ?』
『あ、はい。どうぞ来てください。』
『・・・アリガト。』
とても小さな声が聞こえた。
男爵を見てみると、明るく光る精霊と会話をしている様だ。
『デュアルはもっと力を磨かないのか?勇気の精霊が気にしていたぞ?』
『あいつは、勇気の精霊とも仲良くなれそうなのだが、極める気は無いようだ。まったく器用貧乏め。』
『おいおい、ジンにいらん事を吹き込むなよ。おれも精進してるだろ?こうやって祭りまで執り行って。会いに来てるじゃないか。勇気の精霊も連れてくればいいのに。』
『それはお前の役目だ。お前がもっと精進して呼び寄せればいいだけだ。』
『はいはい』といって、赤い蜥蜴をからかって遊びだした。精霊界ってなんでもいるんだな。
『さて、そろそろ終わるか。』
『なんだ、もう終わりか。』
『あぁ、奴らが持たない。』
『そうか、無理はいけない。精進しろ。デュアル、アルバート。』
『あぁ、明日も来るさ。』
『はい、精進します。』
『さらばだ。』
ジンの去り際も凄まじい風が吹いた。風の勢いに、腕で顔をかばうと、元の暗い洞窟内だった。
「疲れただろ。」
「あぁ、結構効くな~。・・アルバート、大丈夫か?」
「・・・限界です。」
「そうだな、風の王に力を与えればそうなるだろう。」
「風の・・・王?」
「あぁ、上位精霊だ。お前やデュアルでは、呼び出すこともできないし、戦っても勝てない。」
「すごい精霊を、呼ぶんですね。」
「精霊祭だからな。」
その日はガーラさんが呼び出した土の精霊6体に支えられながら、男爵家にたどり着いた。
寝る前に、体力気力の回復の為に風呂へ向かう。
体と心にしみる暖かさだ・・・。
?サンタスが風呂場の隅で、三角座りして落ち込んでる・・・。何があった?




