精霊祭三日目
「腕が・・・もげる」
俺の腕が、熱を帯びている。
かれこれ三日間、この場所に縛り付けられ、トイレと食事(携帯食)以外の時間は腕相撲だ。
モーニングスターって、そんなに高いのか?
そんなことより。客が段々と増えてきている!なぜ!!
疑問に思い、待っている客の声に耳を澄ませると・・・。
「いや~、昨日はタイミングが良くて、6回挑戦して2回も勝てちゃったよ~。」
「タイミング?なんか分かるのか?」
「あのあんちゃん、疲れてくると、左右の腕を交互に使いだすんだ。そうなると後は数回で決まるぜ!」
「いやいや!違う違う!その後に見習い神官が回復させるから、その神官の回復回数も数えなきゃならん!」
「何回だ?」
「俺の見込みでは、1日5回!」
「じゃぁ、強そうなやつにカンパして、早めに疲れさせるか!」
「それな!」
おい、よからぬ作戦を立てているぞ。
だが、だがしかし!!今日の回復役は女性神官!!手を抜くわけにはいかん!!
・・・いや、先に回復してもらって・・・「あなたの回復で力がみなぎります・・・。」か~?
普段は、男だらけで集団生活しているから、余りこういう機会はないが、今日は俺一人だし・・・。
ちょっとした役得か~?
あ!神官ちゃんがこっち見てる!
「え~あんな筋肉だるまを回復するんですか~。もっと細マッチョがよかったな~。」
・・・・今日は、挑戦者の腕が折れるかもしれないな・・・・。折る!!
今日もいい朝だ。
ここ2日は昼からの記憶がない・・・。手足、腰の疲労が残っているが、痛いほどではない。
男爵様が、「無理はないように」と、教会から、見習い神官を多く出してもらった事も影響しているのだろう。・・・・俺、たぶん、回復してもらったんだ。
「無理はないように」って、神官を配置するってことは、無理を通り越す前提じゃないのか?
俺、今日は、にげ・・・・。
ベッドから身を起こした状態の俺の腕を、メイドさんが握っている。
・・・られない。
このメイドさん・・・めちゃくちゃ握力が強いんだよ。俺の代わりに働いてくれないかな~。
腕を掴まれているのに、いつの間にか着替えが完了している。
そして、腰には水袋が6つ。・・・増えたな。
一応、ゆっくりと朝食を取らせてくれるら有難いな。
メイドさんが覚醒するまでが、俺の心の休まるときだ・・・。
「ビルット様、お時間です。」
「昨日より早くないですか?」
「昨日は、到着までに時間がかかりましたので・・・。遅刻はいけませんよね?」
「遅刻してないよね!仕事が始まる前には着いてたよね~!」
「何事にも余裕が大切です。」
「俺の心にも余裕が欲しいんだが!」
「男爵様の指示に御座いません。」
「今日はちょっと体調が悪いから、休みたいんだが?」
「神官様から治癒を頂いております。」
「・・・。殺す気か・・・。」
「心配には及びません。今日も見習い神官様が巡回しております。ご安心ください。」
「・・仕事中に逃げ出してやる・・。」
「それは男爵様の指示に御座いますので、即座に捕縛いたします。」
「有るのかよ!!!って捕縛かよ!!」
どうあっても俺を働かせたいらしい。
「今日もいいお天気ね。パパ!」
「そうだな。精霊祭の日は、大概晴れるんだよ。」
「ね!鳥串かっていい?ママ!」
「もぅ、コーギったら。はしたないわよ?」
「いいじゃない!初めてのお祭りなんだから!」
「そうだな。買っておいで。ぞんぶんに楽しもう。」
私は、初めての精霊祭に浮かれている。
心配だった実家の両親も健在で、(男爵様に手を貸していただいたらしいけど。)また、こうやって家族で歩く事が出来るなんて!
「あっ!パパ!あそこ、すごい人だかりよ!」
「どれ、、身に行こうか。」
腕相撲バトル・・。参加するには、銀1・・・か。勝てば5倍。・・・銀4の儲けね・・・。
「パパ!私もやってみたい!」
「女の子が、無理だって。相手はどこぞの騎士様だろ?」
「いいじゃない!記念よ記念!」
「ヘラシャイ!参加費は銀1だよ!毎度!!」
「さぁ、次は可憐な少女の参戦だ~!」
野次馬がやたら騒ぐ。相手は・・・休憩?治癒中?・・・まずいな~。回復しちゃうのか・・・。
お、出てき・・・・・タス。
「なに縛られてんの?サンタス。」
「なっ!コ、コーギ!お前、なんでここに!」
「両親と散歩中に、面白そうだったから寄ってみたのよ。」
「そうか、じゃ、楽しんで来いよ!」
「もう、参加費払ったのよ。今は治癒後?休憩後?どっち?」
「・・・・トイレ休憩。かな。」
「・・シャ!」
「さぁ!お二人とも準備は良いかな~。かな~?」
「はい。」「まて!」
「さぁ、うら若き乙女が騎士団様にいどむぅ~!準備は良いか?はじめぇ!!」
ゴズ!!
その時、凄まじい勢いで勝負がつき、今日の連勝記録が止まったという。




